私の恋を探してください
「おい、琴子!!さっさと家に入れ!何時だと思ってる!」

 私は、条件反射のように身をすくめる。
 それに気づいた奥川さんは、一歩前に進み出て、会釈した。

「遅くなり申し訳ありません」

 父親は、ジロリ、と、彼を見やると、私を問い詰める。

「――琴子、どこのタクシー会社だ。いつものところじゃないだろう」

「――……あ、あの……」

「大体、何で、ばあさんのところになんて寄って来るんだ。また、何か入れ知恵でもされたか」

「……そ、れは…」

 私が口ごもっていると、千谷沢さんが、かばうように前に出た。
「誰だ、お前」
「琴子さんの大学の先輩にあたります、千谷沢と、そちらは奥川と申します」
 そう言って、彼は、軽く会釈する。
 サラリ、と、ウィッグが前に流れるが、まるで、本当の髪のよう。
 思わず、見惚れてしまったが、状況は最悪だ。
 ズンズンとこちらまでやって来た父親は、探偵二人の前に立ちはだかった。

 ――父親は、優に千谷沢さんより、縦も横も大きいのだ。

「何でもいい!琴子、さっさと中に入れ!」

 けれど、父親は二人を無視し、そう言い放つと、私の腕を掴む。
 いつもの事だが――やっぱり痛い。

「あの!」

 すると、顔をしかめた私に気づいた千谷沢さんは、父親の腕を掴んだ。

「千谷沢さん!」

 私は、思い切り首を横に振って制止する。
 けれど、彼が止まってくれるような人ではないのは――もう、何となく気づいている。


「実の娘に、その扱いは無いんじゃねぇの?」


 見た目と口調のギャップに、一瞬、父親は顔をしかめるが、すぐに踵を返す。
 私もつられて引きずられ、足をもつれさせながらも、後をついて行く。

「琴子!」

「千谷、やめろ」

 追いかけてきそうな千谷沢さんを、奥川さんが止めてくれた。
 私は、彼等に軽く頭を下げるが、父親に強制的に家の中に入らせられる。

 ――まるで、牢獄に入れられるよう。

「まったく――だから、大学なんて行かずに、結婚して家に入れば良かったものを」

 父親は、舌打ちをしながら私を離すと、さっさと居間に戻って行く。

「……申し訳ありませんでした……」

 私は、いつものように、姿の見えなくなった父親に向かって頭を下げた。
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