私の恋を探してください
 テーブルに置かれた冷めきった夕飯を冷蔵庫に入れ、部屋に戻る。
 車の中で軽く食べたので、これは、明日のお弁当行きだ。
 私は、部屋の真ん中に正座すると、視線を下げ、キツく目を閉じた。


 ――ああ、もう、ダメだ。

 ――あんな風なところ見られたら、関わり合いたくないと思われるだろう。


 高校までは、私の環境は全員の知るところで、自分が距離を置かれている事に気がついたのは、物心ついてすぐ。
 まるで、腫れ物のような扱い。
 友人など、できた試しも無い。

 ――汐見のお嬢さんには、関わり合いになるな。

 ――あの家に目をつけられたら、この集落から追い出される。

 集落の子供は、すべて、大人からそう言われて育つのだから。


 ――……きっと、一生、こうなんだろう。


 大学を卒業したら、(まさる)兄さんと結婚して、子供を産んで――一生、この家から、集落から出られずに生きていく。
 そんな未来が、簡単に思い描かれる。

 今までは、それに疑問を持たなかったはずなのに。


「……嫌、だな……」


 そんな言葉が零れ落ちたのは――無意識だった。



 翌朝、いつもの時間に目が覚め、私は、支度を始める。
 すると、スマホがかすかに光っているのが見え、手に取った。
 何か、迷惑メールのようなものだろう。
 そう思ったが、画面を見て固まった。

 ――昨日はお疲れ様でした。
 ――あれから、大丈夫だったかな?
 ――千谷と二人で、心配していました。

 奥川さんの文面に、手が震えた。


 ――……心配……?

 ――……私を……?


 更に続きがあるので、スクロールしていく。
 そして――涙が、一筋、頬を伝った。


 ――依頼は必ずやり遂げます。

 ――他にも、何か困っていれば、二人で駆け付けるから、いつでも連絡ください。


 ――奥川颯介、千谷沢碧。


 署名が、事務所では無い。
 それだけで――彼等自身の言葉なのだと思えた。

 私は、さっと頬を手でこすると、返信をする。


 ――おはようございます。
 ――昨日は、醜態をお見せしてしまって、申し訳ありませんでした。

 ――ですが、あれが、私の日常で、通常なのです。どうか、お気になさらないよう。


 ――ご厚意は、とてもうれしく思います。ありがとうございます。


 ――依頼に関して、また、何かご協力できる事がありましたら、ご連絡ください。


 ――汐見琴子。
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