私の恋を探してください
「琴ちゃん、今までは、自由にさせていたけど――こういう事があるなら、ちょっと、自覚させた方が良いかな」

「――え」

 そう言って、勝兄さんは、私の手首を掴むと、通り道にある小さな神社へと引きずって行く。

「ま、勝兄さん!」

 私はあせって彼を呼ぶが、聞く耳も持ってくれない。
 そのまま木々が生い茂る参道へと入って行き、脇に逸れると、大きな木に身体を押し付けられた。
 私は、背中への衝撃で、顔をしかめる。

「――……っ……ま、勝兄さん……?」

「琴ちゃんは、俺が、伯父さんに逆らえなくて婚約者になった、って、思ってない?」

「……え?」

 私は、彼を見上げ、目を丸くする。
 すると、口元を上げて返された。

「俺が、伯父さんに頼んだんだよ。――琴ちゃんが好きだから」

「――え」

「小さい頃から、ずっとね。真人のところに入り浸っていたのも、琴ちゃんに会いたかったからだよ」

「……え……え、あ、え??」

 あまりの事に、私が呆然としていると、勝兄さんは、そのまま頬に触れてきた。

「――……ま、勝兄さん……?」

「だから――ちゃんと、俺の婚約者って自覚を持って?」

 そう言いながら、彼は、私に口づける。


 ――……え……。


 ――……え?え??


 放心状態の私に、彼は、二度、三度と口づけていき、そして、首筋にキツく吸い付いた。

「――……っ、あっ……!」

 思いもよらぬ事の連続で、私の頭は、キャパオーバー。

「――ああ、可愛いよ。――……俺の琴子(・・)

「ま、勝兄さん……」

 彼は、私を抱き寄せると、髪をゆっくりと撫でる。
 そして、耳元で低く囁いた。

「この先は、卒業まで、ちゃんと待ってあげるから――それまで、心の準備をしておいてね」

 呆然としている私の頬にキスを落とし、勝兄さんは、再びバス停への道に私を連れ出した。
 私は、まるで、機械のように足だけを動かし、彼の後をついて行く。


 ――わかっていたはずなのに。

 ――あの家に生まれた時点で、私の将来は、死ぬまで確定されてしまったのだから。


 ――……なのに。


 私の脳裏に、探偵二人の姿が浮かぶ。

 ――あの二人に会ってから――自分の中で、何かが叫ぶのだ。



「琴ちゃん、ちょうどバスが来たよ」

「え、あ――ハイ。……ありがとうございました……」

 数歩先のバス停の向こう、山間の道から、一台のバスが見えてきた。
 それは、いつもの、集落を始発としたバス。
 これが無ければ、私達学生は、どこにも行けないのだ。

「――ああ、琴ちゃん」

「え?」

 私がバス停で立ち止まると、勝兄さんが、上機嫌に続けた。
「今日の帰りは、俺が迎えに行くから」
「え――……でも……ご迷惑では……」
「何言ってるの。婚約者なんだから、当然だよ」
「――そ、それでは……よろしくお願いします」
 彼に頭を下げると、バスの乗降口のドアが開く。
「では、行ってきます」
「うん、行ってらっしゃい」
 私は、いつものように、運転手さんに挨拶をすると、一番後ろまで向かい、席に着く。
 それを見計らって、バスはいつものように発進した。
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