私の恋を探してください
 いつの間にか、バスは駅に到着し、私はお礼を言って降りる。
 乗っている間、あまりの展開に、頭が現実逃避を図ったようだ。
 私は、昔、おばあ様から聞いていた”初恋の人”の話を思い出していた。

 ――……ちゃんと、見つかるんだろうか……。

 探偵二人の実績は、警察からの依頼のみ。
 こんな風な人探しは、どうなんだろう。

 ――でも……今は、彼等を信じて待つしかないのだ。

 私は、そんな事を思いながら、無人の改札をくぐり、ホームで電車を待った。



「汐見さんや、アレからどんなだい?」

 本日最後の授業が終わり、私は、再び鳥居教授のの研究室(へや)に呼ばれた。

「……いえ、特に二人から、ご連絡はありません」

「――まあ、だろうねぇ。……ボクの親世代だもん、結構な人数いただろうしねぇ」

 教授にソファに促され、私は、腰を下ろす。
 目の前には、年季の入ったコーヒーカップに、並々と黒い液体。
「ミルクと砂糖は、そこにあるからね」
 私はありがたくそれを使い、苦みの効いた液体に口をつけた。
「――で、あの二人、どんな反応だった?」
 けれど、そう尋ねられ、顔を上げる。
「……え……っと……?」
「キミの家まで送って行ったって聞いたけど?」
 教授は、そう言いながら、自分の席でカップに口をつける。
 一応、いろんな面で困る事があるかもしれないので、大学(がっこう)や、お世話になっている教授の方々には、私の家の環境は伝えてあるのだ。
 皆さん、驚くだけだったけれど――鳥居教授だけは、違った。

 ――ウチの集落は、余程でなければ知られる事の無い――閉ざされた集落。

 それを、以前、どなたかの伝手で聞いていたというのだ。
 そして、そんな環境で育った私を、どうやら気にかけてくださっているようで。
 おばあ様の事を相談しようと思ったのも、教授に常日頃お世話になっているからだった。

 私が、チラリ、と、教授を見やると、いつも通りの飄々とした雰囲気。
 それを、少々気まずく感じ、視線を下げ、ポツリ、と、つぶやく。

「……お二人には……申し訳無い事になりました……」

 そう言って、カップを置くと、両手をヒザの上で握り締める。

「……ふぅん」

 教授は、それ以上は聞く事も無く、ただ、自分のコーヒーを飲むだけ。
 結局、少しだけ世間話をすると、私を解放してくれた。

「汐見さんや」

 そして、私は、研究室(へや)を後にしようと、ドアノブに手をかけるが、後ろから呼び止められ振り返る。

「……ハイ」

「あの二人はさ、言った事は違えないよ。――それだけは、信じてほしいね」

「――……そう、ですか……」

 反応の薄い私に、ニコリ、と、教授は微笑む。
 それは、年齢(とし)の割には、幼く、親しみやすい笑顔。
 けれど、いつも、飄々としているようで、真理は外さない。
 だから、この人の周りには、いろんな人が集まるのだろう――。

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