私の恋を探してください
 今日も、図書館で、電車時間ギリギリまでの勉強を終えると、私は、バッグを肩にかけて立ち上がった。
 頭がいつもより働かなかったせいか、少々押してしまったので、駅まで早足で歩かなければ。
 そんな事を思っていると、出入口の辺りが騒々しいのに気がつき、少々眉を寄せた。
 女子学生の声が、きゃあきゃあ、と、響き渡る。
 ここは、勉強するところなのに――そんな思いを沈め、ため息をつくと、私は、残念ながら一つしか無い出入口まで歩き出す。

 ――……また、何かあったのだろうか。

 ――私には、関係無い事だろうけれど。


「あ、来た」

「琴子!」


 けれど――目の前に現れた探偵二人に、私は、驚き過ぎて口をポカンと開けてしまった。


 ――……何で?


 放心状態でいると、二人は、囲んでいた女子学生をやんわりと遠ざけ、足早にやって来る。

「来い!ちょっと、確認してぇコトがあるんだよ」

「――えっ、えっ……?」

 昨日と変わらぬ態度の千谷沢さんに腕を取られ、思わず身体を跳ね上げさせてしまう。

 ――だから、心臓が飛び出そうなんですけど⁉

「おい、千谷。汐見さん、驚いてるだろ」

 そんな私に気づくと、奥川さんは、あきれたように千谷沢さんの肩を掴み、制止してくれた。
「あ、ああ。悪ぃな」
「……い、いえ……」
 千谷沢さんは、バツが悪そうに手を離す。

 ――どうして、こんな簡単に触ってくるんだろう、この人――。

 心のどこかで、モヤモヤしながらも、私は、軽く首を振って返した。

「千谷、女性には、簡単に触るなって言ってるだろう」
「――……わかってるって」
「わかってたら、僕は止めないでしょ」
「だってよ――」
「あっ……あのっ……ご、ご用件、は……」
 再び言い合いが始まりそうになったので、私は、慌てて二人の間に入る。
 すると、奥川さんは、肩をすくめて言った。
「ゴメンね、汐見さん、つい――。ちょっと、場所変えても良いかな?」
「あ、ハ、ハイ。わか……り……ま……」
 けれど、勝兄さんの言葉が脳裏をよぎり、口ごもった。
「汐見さん?」
「どうした、琴子?」
 私は、二人に頭を下げる。
「……申し訳ありません。……その……いつもの時間に、迎えが来る予定になっていて……」
 これ以上、時間がかかると、電車に乗り遅れる可能性が出てくる。
 昨日の今日では、父親が爆発するのは確定だろう。
 けれど、顔を上げた私を見る二人の表情が、とても複雑そうで、眉を寄せた。

 ――……あれ……何か、した……?

 すると、千谷沢さんは、頭をかきながら視線を逸らし、奥川さんは、バツが悪そうに微笑んだ。

「……えっと、セクハラ覚悟で言うね。……首の辺り、赤いよ?」

「――……え……え、っと……?」

 キョトンとして返すと、千谷沢さんは、少々イラついたように告げた。


「だからっ……キスマーク(・・・・・)ついてんぞ、お前!」


「――……え……――……っ……!!!」


 反射的に、今朝、勝兄さんに、キスを散々された事を思い出し、左手で心当たりを押さえる。


 ――……ウソッ……!!!


「――……まあ、うん、彼氏(・・)が心配するのは、ちょっとわかる、かな……」

 涙目になりかけた私をフォローするように、奥川さんは言う――が、それに首を振った。
「かっ……彼氏、ではっ……」
「じゃあ、何だよ。変質者か?!」
 血相を変えた千谷沢さんは、私の手を取ろうとするが、更に首を振る。

「琴子?」

「こっ……婚約者……で、す……」

「――……え?」



「……大学を卒業したら……結婚、する予定の……親が決めた婚約者……です……」


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