私の恋を探してください
 突然現れた勝兄さんに、私は、動揺を隠せない。

「……な、何で……迎えって、駅じゃ……」

 すると、彼は、チラリ、と、周囲を見渡して言った。

「久し振りに母校(・・)の様子が見たくてね」

「――え、あ……」

 そう言われ、ようやく、彼もN大卒だったと思い出した。
 集落では、徐々に、子供の大学の進学も認められるようになっていて――彼は、その最初の代くらいだったはずだ。

「琴子、そいつ、誰だ」

 千谷沢さんは、振り返り、私達の方へズンズンと近づきながら、問いかけた。
 それを、奥川さんが、慌てて追いかける。

「お、おい、千谷!失礼な口利くんじゃないよ」

「――……”琴子”?」

 勝兄さんは、千谷沢さんを見やり、眉をひそめる。
 この空気は――明らかにマズい。
 私は、慌てて、臨戦態勢になりそうな二人の間に入る。

「あ、あのっ……ま、勝兄さん、この人達が――昨日、送っていただいた、先輩方で……」

 その様子を見やり、奥川さんが更に続けた。

「初めまして。――汐見さんの先輩になります、僕が奥川、そちらが、千谷沢と申します」

「――……え……」

 すると、勝兄さんは、目を見開き――彼等を交互に見やる。
 そして、皮肉るような口調で言った。

「――……ああ、あの、”ミスコン潰し(・・・・・・)”の、千谷沢先輩(・・)でしたか。昔より、美貌に磨きがかかりましたね」

「――……それを知っているという事は、年度が被っています?」

 苦笑いで奥川さんが尋ねると、勝兄さんは、口元を上げる。

「先輩方の一学年下ですよ。――学部は違いましたが、お二人、有名でしたから」

 そう言うと、チラリ、と、千谷沢さんを見下ろす。

「――それにしても……風のウワサじゃ、お二人、警察学校に入学したって聞いたんですけど――デマでした?」

「――いや、二人で辞めた」

 千谷沢さんは、勝兄さんをにらみつけるようにして言った。

「辞めた?――せっかく、入ったのに、ですか?」

「プライベートだ」

 そして、彼は、視線を逸らさず、続ける。

「それより――お前が、琴子の婚約者ってヤツか」

 勝兄さんが纏う空気が、一瞬で冷えた。

「人の婚約者、呼び捨てはどうかと思いますが?」

「自分の婚約者を大事にできねぇヤツに、とやかく言われたくねぇよ」

「――どういう意味だよ」

 私は、息をのむと、勝兄さんの腕を引いた。
「あ、あのっ……も、もう、時間が……」
「――琴子」
 千谷沢さんは、私に視線を向ける。
 私は、彼を止めたくて、かすかに首を振って返した。
「――ああ、そうだね。すみません、帰るのに時間がかかるもので」
 勝兄さんは、私の手を取ると、指を絡める。
 その行動が、気まずくて――思わず、うつむいてしまうが、そっと、千谷沢さんをのぞき見る。
 ――彼に、どう見られるか……それが、何故か、気になってしまって。
 千谷沢さんは、眉を寄せるが、すぐに、奥川さんが抑えるように肩に手を置いた。

「――それでは」

 勝兄さんは、そのまま、路駐したままのSUV車に、私を乗せると、探偵二人に見せつけるように頭を撫でた。

「じゃあ、帰ろうか、琴子」

「――ハ……ハイ……」

 私は、車の窓越しに、彼等に頭を下げる。
 勝兄さんは、それを見計らい、車を出した。
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