私の恋を探してください
 大学を出て、車は国道をひたすら走り続ける。
 勝兄さんは、時折、仕事に必要なものや、集落や村では手に入りにくい用具などを買い出しに、この辺まで出て来るので、大きな道も慣れたように運転していた。
 無言でいる私をよそに、彼は、世間話を続ける。
 そして、次第に見慣れた景色が視界に入る頃、思い出したように言われた。

「ああ、そう言えば、琴ちゃん、聞いてるかな?」

「――え?」

 私は、慌てて顔を上げる。
 これ以上、彼の機嫌を損ねるような事もできない。

「伯父さんがさ、先代(・・)のところには、出入り禁止にするって」

「――……え……っ……⁉」

 先代とは――おばあ様の事だ。

 私は、驚いて勝兄さんを見やった。

「……ど、どうして……」
「だって、琴ちゃん、あの二人連れて、施設に行ったんでしょ?」
 そう返され、息をのむ。
 私の表情を見やると、勝兄さんは、苦笑いで続けた。
「元々、伯父さんの伝手で、先代はあの施設に入ったんでしょ?情報なんて、筒抜けだよ」
「……そ、そんな……」
「琴ちゃんにしては、珍しいね。――そこに考えが至らなかった?」
「……っ……」
 彼は、少しだけ車のスピードを落とすと、ウィンカーを左につける。
 そして、到着したのは――彼の家。

 離れとは名ばかりの、立派な一軒家だ。

 彼の家との距離も相当あり、ここだけで、一つの戸として扱われても良いくらいの広さ。
 成人した時に、離れという扱いで建てたそうだ。
 車が玄関のそばに停車し、私はシートベルトを外す。

 ――最終的には、結婚後の新居として考えているようで、婚約が決まってから、週末になると、私はこちらに泊まっている。

 それは、父親が、あわよくば先に子供ができたら、大学を辞めさせられると考えているせいだ。
 けれど、勝兄さんは、最初の夜に私に言ったのだ。

 ――大丈夫。
 ――心配しなくても、伯父さんには上手いコトごまかしておくから、琴ちゃんは、ゆっくり勉強すればいいよ。

 あっけに取られた私は、さすがに虫のいい話だと疑ったけれど――大学入学と同時に、正式に婚約が決まってから、一年以上経っても、彼が怪しい動きをする事など無く。
 それに甘え、週末は、この家でレポートや課題を終わらせるようになった。

「琴ちゃん、もう、夕飯は大体作ってあるから、仕上げだけ待ってて」

「あ、ありがとうございます」

 勝兄さんは、そう言って、キッチンへと向かっていく。
 私は、それを見送ると、自分用にあてがわれた二階の部屋へ向かった。
 そこは第二の自分の部屋と言っても良いほど、私物が置いてある。

 ――……婚約の話が無ければ、本当に、こちらに住み続けたいくらいに、快適なのに。

 そんな事を思いながら、通学用のバッグを置き、スマホを取り出すと、メールが届いていた。


 ――千谷沢さんから。
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