私の恋を探してください
「それで、琴ちゃん、大学はどんなかな?」

「――え、あ、ハイ。……教授は、とても素晴らしい方で……毎日、とても、勉強になります」

 昼食の片づけを終えると、勝兄さんは、リビングのソファに私をうながし、隣り合って座る。
 そして、そう尋ねられたので、答えるが――勝兄さんは、眉を寄せた。
 それに、私は、ギクリ、と、心臓が冷えてしまう。

 ――何か、間違えた?

 彼の機嫌は、よくわからないところで下がるのだ。
 だから――ちゃんと、見ておかないといけないのに。

「うん。まあ、それもそうだよね。――琴ちゃん、勉強好きだもんね」

「……あ、あの、勝兄さん?」

「でもね、俺が言ってるのは、変な男が寄ってきていないか、って、コト」

「え」

 一瞬、よぎったのは――探偵二人の姿。

 けれど、私は、緩々と首を振って返した。

「……そんな方は、誰もいらっしゃいません。……そもそも……私は、皆さんに距離を取られているので……」

 自分で言って、落ち込んでしまう。

 ――私には、生まれてこの方、友人なんてものは、いた試しが無い。
 
 ――……唯一、心を許せるのは――おばあ様だけなのに。

 そのおばあ様も、今は、すぐには会えないところにいる。

 大学でも、集落でも――私は、ひとりなのだ。

 すると、不意に肩を抱き寄せられ、顔を上げた。
「――そっか。……でもさ、琴ちゃんには、俺がいるからね」
「……ハイ……」
 うなづいて返せば、頬にキスを落とされる。
「ああ、そうだ、琴ちゃん。今日の仕事(ぶん)は、終わってるからさ、これから、先代のところに行ってみる?」
「――え」
 私は、驚いて、勝兄さんを見上げた。
「え、で、でも……」
「琴ちゃんは出禁でも、俺は違うよ?」
「――……でも……父さんが……」
「俺が一緒なら、総代だって文句言わないでしょ。問題なのは――琴ちゃんが、一人で行くってコトなんだからさ」
 彼は、ニッコリ、と、どこか含んだような笑みをくれる。
 それに、どこか不安を感じながらも、おばあ様に会えるのなら、と、うなづいたのだった。



「だーから、何でダメなんですか⁉」
 
 おばあ様の入っている施設に到着し、中に入った途端、受付に見覚えのある女性――いや、女装姿の千谷沢さんが目に入り、私は、ギョッとした。

 ――何でいるの⁉

 すぐそばには、奥川さんの姿。
 彼は、私と勝兄さんに気づき、眉を下げる。

「琴子!ちょうど良かった、何か、入ったらダメとか言われたんだけどよ!」

「ちっ……千谷沢さん!」

 ――言葉遣いが男性に戻ってます!

 私は、勢いよく首を振った。
 彼は、それに気づいたのかどうか――受付の女性に、ニコリ、と、笑顔を向ける。

「ちょうど、連れ(・・)が来ましたので、よろしいですよね?」

 けれど、いつもの受付の方は、私を見やり――首を振った。

「申し訳ありません。お嬢様も、出入り禁止と指定されておりますので――」

「――え」

 探偵二人は、驚いて私を見やる。
 その視線が気まずく、視線を下げた。


「ああ、今日は、俺もいますので、お願いします」


 すると、隣にいた勝兄さんが、そう言って受付の方に笑顔を向ける。
 彼女は、一瞬呆けたが、チラリ、と、奥の方へ視線を向け、うなづいた。

「――承知致しました。では、こちらに記帳をお願い致します」

 勝兄さんは、慣れたように記入を終え、私を振り返った。
「じゃあ、行こうか、琴ちゃん」
「あ、あの、勝兄さん……」
 私が、探偵二人に視線を向けると、彼は、肩をすくめる。
「俺が連れて行けるのは、琴ちゃんだけだよ?」
「で、でも――」
「――それに、何で、お二方が、先代に会う必要があるの?」
「――……っ……そ、それは……」
 私は、口ごもり、二人に視線を向ける。
「――汐見さん、仕方ないから。僕等は、部外者だしね」
「で、でも」

 ――おばあ様にお話を聞くつもりで、ここに来たはずなのに。

 奥川さんは、笑顔を貼り付け、勝兄さんに言った。

「お邪魔しました。どうやら、僕等は出禁のようなので、おばあ様によろしくお伝えください」

「――それはどうも」

 千谷沢さんは、私に視線を向ける。
 その強さに、ドキリ、と、心臓が跳ね上がった。

「行こうか、琴ちゃん」

「え、あ、ハ、ハイ」

 勝兄さんに呼ばれ、慌てて、その後をついて行く。

 ――……二人には、後で、詳しい話をした方が良いのだろうか……。

 そう思いながら、おばあ様の部屋に向かった。
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