私の恋を探してください
「――おや、珍しい顔がいたものだね」

「おばあ様、ご無沙汰しております」

 部屋に入った私達を見やると、おばあ様は、読んでいた本を置き、目を丸くする。
 勝兄さんとは、あまり、顔を合わせる事は無いのだ。
「で、琴ちゃん、誰か騒いでいたようだけど――不審者でも出たのかい?」
「え、あ、いえ……その……」
 気まずそうに勝兄さんを見上げると、彼は口元を上げて返す。
「お気になさらず。不審者というよりは――要注意人物のようで、施設の方と口論していたようです」
 おばあ様は、チラリ、と、私を見やる。
 その視線に、ウソがバレた子供のように、身を縮こませてしまった。
「――ああ、そうかい。本当に、物騒な世の中だね」
 おばあ様は、棚に置いてあった湯呑を見やると、勝兄さんに言った。

「勝、ちょうど良かった。買い出しを頼んでも良いかい」

「――え?」

 目を丸くした彼に、おばあ様は、更に続けた。

「このところ、来客ばかりでね。お茶っ葉が無くなりそうなんだよ。お前、ひとっ走り行ってきてくれないかい?」

「……え、あ――でも……」

 気まずそうに私に視線を向けると、勝兄さんは、おばあ様にうなづいた。
「承知しました。銘柄は、何が良いでしょうか」
「ちょっと遠いけど、緑宝園(りょくほうえん)のヤツを二袋頼むよ。やっぱり、お客様には、良いヤツをお出ししたいじゃないの」
 あっさり言われるが――そこは、村の隣、T町の商店街の老舗だ。
 おばあ様は、お知り合いなので、いつもそこで買っているけれど――。
「……往復でも、一時間以上かかりますけど」
 さすがに遠い。
 勝兄さんは、少しだけ不服そうに、おばあ様を見やる。
「おや、じゃあ、スーパーの特売品で良いのかい?”汐見”の先代の客に出すお茶が」
「――……っ……わ、わかりました。じゃあ、琴ちゃんも……」
「琴ちゃんは、おばあの話し相手だよ。勝、一人で行ってきておくれ」
 おばあにそう返され、勝兄さんは、言葉を飲み込む。
 さすがに、あの集落で育った人間は、先代とはいえ、おばあ様の立場の強さを理解しているから、下手に逆らえないのだろう。
「……では、行ってきます」
「ああ、安全運転でね」
「――お気遣いありがとうございます」
 勝兄さんは、そう言い捨てると、部屋を出て行く。
 私は、呆気に取られながらも彼を見送ると、おばあ様を振り返った。

「……あの……おばあ様……」

 おばあ様には珍しく強引なやり取りに、違和感を覚え、私は尋ねる。

「……もしかして……」

「人払い、と、でも言うのかね。――琴ちゃん、あの二人(・・・・)は、昨日の用事で来たのかい?」

 私は、一瞬、息をのむ。

 ――けれど、おばあ様には、ごまかしは通用する訳も無く。

「……ハイ……」

 ――そう、素直にうなづいて返したのだった。
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