私の恋を探してください
そろそろ本題に入らないと、さすがに職員の方が様子を見に来るかもしれないと思い、私は、奥川さんに視線を向ける。
彼は、軽くうなづくと、おばあ様に尋ねた。
「お暇する前に、少々、お尋ねしたいのですが」
「ええ、どうぞ」
「――おばあ様が、昔、通っていらした学校の思い出など――何か、記憶に残っているような出来事は、ありましたか?」
「……学校、ですか」
おばあ様は、少しだけ口を閉じ、空を見つめる。
そして、すぐに、苦笑いを浮かべた。
「――私どもの時代は、ようやく戦争も終わって、勉強ができるようになったと思われているでしょうが……何せ、いろいろなものが不足していたのでね、今の人達から見れば、その程度の事、と、思われますよ」
「そうですか。――学業以外のイベント事などは?」
「いえいえ。毎日、学生寮と学校の往復ですよ。学校が再開したとはいえ、そこまでの余裕なんて、とてもとても」
おばあ様は、ほんの少しだけ遠い目をする。
それは――記憶をたどっているからか。
奥川さんは、チラリ、と、施設の方に視線を向ける。
どうやら、入居者の人達が散歩に出てきているようで、少しだけ話し声が聞こえた。
――マズい。
こんなところを見られたら、出禁どころじゃない。
退去させられるかもしれない。
私は、探偵二人に視線を向け、かすかに首を振る。
――これ以上は。
奥川さんは、その意味を捉えてくれ、うなづいたのだけれど。
「でも、そのくらいの時期なら、恋愛話の一つや二つ、あったでしょう?」
千谷沢さんは、ニッコリ、と、満面の笑みを浮かべて、おばあ様に尋ねる。
――ああっ!何で直球で聞くんですかっ……!!?
けれど、おばあ様の手前、私が動揺を見せる訳にもいかず、ひたすら、彼に念を送る。
――早く、逃げてください‼
なのに。
「――恋愛話ねぇ……。……まあ、憧れの人くらいはいただろうけど……遠い昔の事ですし、忘れてしまいましたね」
おばあ様も、律儀に答えてくれてしまうので、私は、近づいてくる複数の足音と話し声の方に視線を向けた。
――本当に、これ以上は!!
「あら、汐見さん。お孫様とお散歩ですか?」
その瞬間、後方からかけられた声に、肩を跳ね上げる。
「ええ。少しは動いておかないと、弱りますからねぇ」
おばあ様は、ゆっくりと振り返り、やってきた施設の職員の方に答えた。
私は、チラリ、と、フェンスの方へ視線を向ければ、探偵二人の姿は既に見えず。
それに、胸を撫で下ろすと、不意にバッグが振動したので、私は、少しだけおばあ様から離れ、中からスマホを取り出した。
――一旦、戻る。
――また、連絡するから。
メールの送り主は、千谷沢さんだ。
私は、心底ホッとすると、おばあ様とともに部屋に戻ったのだった。
彼は、軽くうなづくと、おばあ様に尋ねた。
「お暇する前に、少々、お尋ねしたいのですが」
「ええ、どうぞ」
「――おばあ様が、昔、通っていらした学校の思い出など――何か、記憶に残っているような出来事は、ありましたか?」
「……学校、ですか」
おばあ様は、少しだけ口を閉じ、空を見つめる。
そして、すぐに、苦笑いを浮かべた。
「――私どもの時代は、ようやく戦争も終わって、勉強ができるようになったと思われているでしょうが……何せ、いろいろなものが不足していたのでね、今の人達から見れば、その程度の事、と、思われますよ」
「そうですか。――学業以外のイベント事などは?」
「いえいえ。毎日、学生寮と学校の往復ですよ。学校が再開したとはいえ、そこまでの余裕なんて、とてもとても」
おばあ様は、ほんの少しだけ遠い目をする。
それは――記憶をたどっているからか。
奥川さんは、チラリ、と、施設の方に視線を向ける。
どうやら、入居者の人達が散歩に出てきているようで、少しだけ話し声が聞こえた。
――マズい。
こんなところを見られたら、出禁どころじゃない。
退去させられるかもしれない。
私は、探偵二人に視線を向け、かすかに首を振る。
――これ以上は。
奥川さんは、その意味を捉えてくれ、うなづいたのだけれど。
「でも、そのくらいの時期なら、恋愛話の一つや二つ、あったでしょう?」
千谷沢さんは、ニッコリ、と、満面の笑みを浮かべて、おばあ様に尋ねる。
――ああっ!何で直球で聞くんですかっ……!!?
けれど、おばあ様の手前、私が動揺を見せる訳にもいかず、ひたすら、彼に念を送る。
――早く、逃げてください‼
なのに。
「――恋愛話ねぇ……。……まあ、憧れの人くらいはいただろうけど……遠い昔の事ですし、忘れてしまいましたね」
おばあ様も、律儀に答えてくれてしまうので、私は、近づいてくる複数の足音と話し声の方に視線を向けた。
――本当に、これ以上は!!
「あら、汐見さん。お孫様とお散歩ですか?」
その瞬間、後方からかけられた声に、肩を跳ね上げる。
「ええ。少しは動いておかないと、弱りますからねぇ」
おばあ様は、ゆっくりと振り返り、やってきた施設の職員の方に答えた。
私は、チラリ、と、フェンスの方へ視線を向ければ、探偵二人の姿は既に見えず。
それに、胸を撫で下ろすと、不意にバッグが振動したので、私は、少しだけおばあ様から離れ、中からスマホを取り出した。
――一旦、戻る。
――また、連絡するから。
メールの送り主は、千谷沢さんだ。
私は、心底ホッとすると、おばあ様とともに部屋に戻ったのだった。