私の恋を探してください
 おばあ様の部屋に戻ると、私は、震える足を隠すように、ソファに座った。

 ――さすがに、心臓に悪い。

 私は、小さく深呼吸する。

「琴ちゃん、勝が来るまでに、何か食べるかい?」

「え、あ、いえ……大丈夫です」

 おやつ時、という事もあってか、おばあ様は、棚からお菓子の箱を取り出していた。
 昔は、学校から帰ると、いろいろと用意されていたのを思い出す。
 おばあ様は、箱から小袋を皿に移すと、私の前のテーブルに置いた。
「コレは、お隣の方からいただいたものでねぇ。都会で話題だって、お孫さんが買って来てくれたんだそうだよ」
「……そ、そう、ですか……」
 それを無下にするのもためらわれたので、恐る恐る、手を伸ばす。
 小袋から出し、口に入れれば、クリームチーズのような風味と、かすかにレモンの酸味が感じられた。
「……美味しい」
「あら、良かった。おばあにはハイカラ(・・・・)すぎるから、ちょっと気が引けてたんだよ。琴ちゃん、良かったら、全部持って行きなさいな」
「――え?あ、いえ、でも」
 ――おばあ様がいただいたものなのに。
 そう続けようとすると、おばあ様は微笑みながら首を振った。
「良いんだよ。孫が喜ぶなら、いただいた甲斐があるというものだからね」
「……そ……そう、ですか……。では……」
 私が、うなづくと、おばあ様は、紙袋に入れたお菓子を手渡した。

「――ありがとうございます、おばあ様」


 ――……あの二人に、持って行ったら――迷惑、だろうか。


 ふと、そんな事が、頭をかすめる。

 ――……そう思った自分が、少し、不思議だった。



 勝兄さんが戻って来るまで、おばあ様は、他愛無い話を続け、私は、それに耳を傾ける。
 どの話に、初恋の人のヒントがあるか、わからない状況なのだ。
 しっかりと聞いておかないと。
 そう思っていたせいか、いつもより前のめりになってしまっていた。

「琴ちゃん、おばあは、大した話をしてる訳じゃないんだから、そんな真面目くさった顔で聞かなくても良いんだよ?」

「――……え」

 思わず両手を自分の顔に当ててしまう。
 おばあ様は、クスクス、と、笑いながら、私に言った。

「真面目なのは、琴ちゃんの良いところだよ。――でもね、時には、力を抜いても良いんだからね」

「……ハ、ハイ……」

 私は、言われたそばから、真面目にうなづく。
 ――すると。

「――……ああ、そう言えば……あの人も、真面目くさって、なんて、ご友人に言われてたものだったわね」

「――……え?」

 あの人、とは――……。

 そう尋ねようとしたら、おばあ様は、独り言のように続けた。

「――ええ、そうね。真剣な表情で、ご友人と難しい話をしていらしたわね。よくわからない言葉を、たくさん、おっしゃっていた……」

「――……おばあ様……?」

「いつも、何を話されていたのかしらねぇ……。……私にも、計算(・・)がわかれば、わかったのかしら……」


 ――……”計算”?


 私は、続きを待つが、おばあ様は、そのまま黙り込んでしまった。

 ――でも……。

 ――……何かの手がかりになれば……。

 そう思うと、早く、探偵二人に会いたくなった。
< 37 / 54 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop