私の恋を探してください
9.私には、やっぱり、自由なんて無いのだ
翌日、夕方。
いつものように、勝兄さんに送られて家に帰れば、既に酔いが回った父親が玄関先で、珍しく私達を迎えてきた。
「――た、ただいま帰りました……」
「琴子」
「ハイ」
「お前は、もう、勝の家に住め」
「……ハイ……?」
あっさりとした爆弾発言に、私は、一時停止。
ようやく、父親の言葉が脳内でかみ砕かれると、ギョッとして、後ろにいた勝兄さんを見上げた。
――まさか……父さんに何か吹き込んだの……⁉
けれど、珍しく、彼も目を丸くしていたので、また、父親の勝手な命令なのだと飲み込んだ。
「……お、伯父さん、どうしたんですか、急に……」
「どうしたもこうしたも――琴子、勝には言っておいたが、お前は祖母さんの施設には、今後出入り禁止だ。勝は、コイツを見張っていろ」
あからさまに不機嫌な表情で言われ、私は、唇を噛みしめた。
――……どうして……そんな風に決められるんだろう。
「いや、伯父さん、さすがに見張りまでは――」
「そ、そうです……!だ、大体、どうして急にそんな事を……」
私達が口をそろえて言うと、父親は、吐き捨てるように言った。
「どうして、は、こっちのセリフだ、琴子。何で、よそ者を祖母さんに会わせる必要がある!」
「――……っ……」
それは――探偵二人の事。
昨日、彼等が施設にやって来ていた事は、やはり、父親には筒抜けだったようだ。
「大体、お前等は、さっさと子供を作れ。少子化云々は、この集落には関係無い話だからな」
「そっ……それは、私が大学を卒業してからだと――」
「そんなものは、関係無い!」
アルコールが若干多かったのだろうか、どんどん気色ばってきた父親に、私は青くなる。
――父さんが、こんな事を言い出したとなったら――。
「お父さん、そろそろ部屋に戻りませんか」
すると、母親が、おずおずと、そう言いながらやって来て、父親を居間へと方向転換させようとする。
けれど、その手を振り払い、父親は怒鳴りつけた。
「お前は黙っていろ!これは、”汐見”の将来の話だ!」
「――はい」
母親は、視線を下げてうなづく。
――これが――この家の、日常なのだ。
「それにだ、真人の縁談もまとまったから、お前がいたら邪魔だろう」
「――え」
私は、思わず、目を丸くして勝兄さんを見やった。
彼も、さすがに初耳だったらしく、眉を下げて首を振る。
「相手は、端台の娘だ。確か、お前よりも二つ上で、今年、集落に戻って来たから、ちょうど良かった」
父親は、縁談の事を話し出すと、急に上機嫌になった。
「分家の隅にいるような家だから、大喜びでまとまったんだぞ。この秋に式を挙げて、ウチに来るんだ」
「……そ……そう、ですか……」
――状況はともかく――兄さんにお嫁さんが来るのであれば、私の存在は、確かに邪魔だろう。
「わかりました、伯父さん」
勝兄さんは、私の肩を抱きながら言った。
「こちらは、いつでも大丈夫ですが、琴ちゃんの準備もあります。徐々に荷物を移動させて――そうですね、週末くらいには、引っ越すような形にしますね」
当然とばかりに言われ、胸の中が凍る。
「そうか、早目に頼むぞ、勝」
「承知いたしました」
父親は、そう、勝兄さんにうなづくと、私を一瞥だにせず、部屋に戻っていった。
いつものように、勝兄さんに送られて家に帰れば、既に酔いが回った父親が玄関先で、珍しく私達を迎えてきた。
「――た、ただいま帰りました……」
「琴子」
「ハイ」
「お前は、もう、勝の家に住め」
「……ハイ……?」
あっさりとした爆弾発言に、私は、一時停止。
ようやく、父親の言葉が脳内でかみ砕かれると、ギョッとして、後ろにいた勝兄さんを見上げた。
――まさか……父さんに何か吹き込んだの……⁉
けれど、珍しく、彼も目を丸くしていたので、また、父親の勝手な命令なのだと飲み込んだ。
「……お、伯父さん、どうしたんですか、急に……」
「どうしたもこうしたも――琴子、勝には言っておいたが、お前は祖母さんの施設には、今後出入り禁止だ。勝は、コイツを見張っていろ」
あからさまに不機嫌な表情で言われ、私は、唇を噛みしめた。
――……どうして……そんな風に決められるんだろう。
「いや、伯父さん、さすがに見張りまでは――」
「そ、そうです……!だ、大体、どうして急にそんな事を……」
私達が口をそろえて言うと、父親は、吐き捨てるように言った。
「どうして、は、こっちのセリフだ、琴子。何で、よそ者を祖母さんに会わせる必要がある!」
「――……っ……」
それは――探偵二人の事。
昨日、彼等が施設にやって来ていた事は、やはり、父親には筒抜けだったようだ。
「大体、お前等は、さっさと子供を作れ。少子化云々は、この集落には関係無い話だからな」
「そっ……それは、私が大学を卒業してからだと――」
「そんなものは、関係無い!」
アルコールが若干多かったのだろうか、どんどん気色ばってきた父親に、私は青くなる。
――父さんが、こんな事を言い出したとなったら――。
「お父さん、そろそろ部屋に戻りませんか」
すると、母親が、おずおずと、そう言いながらやって来て、父親を居間へと方向転換させようとする。
けれど、その手を振り払い、父親は怒鳴りつけた。
「お前は黙っていろ!これは、”汐見”の将来の話だ!」
「――はい」
母親は、視線を下げてうなづく。
――これが――この家の、日常なのだ。
「それにだ、真人の縁談もまとまったから、お前がいたら邪魔だろう」
「――え」
私は、思わず、目を丸くして勝兄さんを見やった。
彼も、さすがに初耳だったらしく、眉を下げて首を振る。
「相手は、端台の娘だ。確か、お前よりも二つ上で、今年、集落に戻って来たから、ちょうど良かった」
父親は、縁談の事を話し出すと、急に上機嫌になった。
「分家の隅にいるような家だから、大喜びでまとまったんだぞ。この秋に式を挙げて、ウチに来るんだ」
「……そ……そう、ですか……」
――状況はともかく――兄さんにお嫁さんが来るのであれば、私の存在は、確かに邪魔だろう。
「わかりました、伯父さん」
勝兄さんは、私の肩を抱きながら言った。
「こちらは、いつでも大丈夫ですが、琴ちゃんの準備もあります。徐々に荷物を移動させて――そうですね、週末くらいには、引っ越すような形にしますね」
当然とばかりに言われ、胸の中が凍る。
「そうか、早目に頼むぞ、勝」
「承知いたしました」
父親は、そう、勝兄さんにうなづくと、私を一瞥だにせず、部屋に戻っていった。