私の恋を探してください
12.今の私にできる事
駅を出た私は、探偵事務所へと真っ直ぐに向かう。
何のアポも無いけれど――……もし、不在だったら、あきらめて帰れば良い。
そんな風に思えるのは、今までの私なら考えられないのに。
少し歩くと、すぐに、先日伺ったビルが見えた。
記憶を頼りに階段を上り、事務所のドアの前に立つ。
一旦、深呼吸。
次に、軽くドアをノック。
「ハイハイ――……って、あれ、汐見さん?」
「あ、こ、こんにちは」
ドアを開けた奥川さんを見上げ、私は、頭を下げる。
「どうぞ、入って。千谷は、今出てるけど」
「あ、そ、そうですか。……すみません、アポも取らずに……」
彼は、苦笑いで、軽く首を振る。
「構わないよ。まだ、正式に広告も出してないから、今のところ、一般の依頼は汐見さんだけだし」
そして、そう言いながら、私をソファに案内すると、給湯室に向かった。
「時間、まだ大丈夫なのかな?」
「あ、ハ、ハイ」
「じゃあ、コーヒー淹れるね」
「ありがとうございます」
奥川さんは、コーヒーメーカーをセットすると、部屋越しに私に尋ねた。
「それで――今日はどうしたのかな?」
「――あ、えっと……」
私は、昼間に思った事を言おうとしたが――何故か、気恥ずかしくなり、口ごもった。
「……その……昔のおばあ様の様子を……思い出そうとしているのですが……」
「うん」
「――……ち、千谷沢さんが、話していると意外と思い出すものだ、と……」
「ああ、そっか。アイツ、昔、そんな事言いながら、聞き込みしていたからね」
「そう、みたいですね……」
言いたい事が伝わったのだろか。
奥川さんは、いろいろと作業をしながら、私に話しかけてきた。
「じゃあ――最近の、おばあ様の様子は、どんなかな?」
「あ、ハイ……落ち着いております。今は、調子が良いようで、お医者様のお世話にはなっておりません」
「そう。基本、もう、ずっと施設にいるのかな?一時帰宅、みたいな事は?」
「お盆とお正月に、帰って来られますが……それ以外は、ずっと、施設です」
「――そう」
彼は、作業に集中しているようで、私も口を閉じる。
そして、少しして、トレイにコーヒーカップを乗せてやってきた。
「どうぞ。今日は、この前よりも頑張ってみたよ」
「――……綺麗……」
カップに描かれているのは、羽を広げている白鳥のよう。
その、繊細さに、ため息が漏れた。
「ありがとう。千谷に出しても、そのまま飲んじゃうからさ、張り合い無いんだよね」
「え」
私は、目を剥きそうになって、慌てて顔を伏せた。
――こんな、芸術作品を、あっさりと⁉
その反応に満足したのか、奥川さんは、にこやかに続けた。
何のアポも無いけれど――……もし、不在だったら、あきらめて帰れば良い。
そんな風に思えるのは、今までの私なら考えられないのに。
少し歩くと、すぐに、先日伺ったビルが見えた。
記憶を頼りに階段を上り、事務所のドアの前に立つ。
一旦、深呼吸。
次に、軽くドアをノック。
「ハイハイ――……って、あれ、汐見さん?」
「あ、こ、こんにちは」
ドアを開けた奥川さんを見上げ、私は、頭を下げる。
「どうぞ、入って。千谷は、今出てるけど」
「あ、そ、そうですか。……すみません、アポも取らずに……」
彼は、苦笑いで、軽く首を振る。
「構わないよ。まだ、正式に広告も出してないから、今のところ、一般の依頼は汐見さんだけだし」
そして、そう言いながら、私をソファに案内すると、給湯室に向かった。
「時間、まだ大丈夫なのかな?」
「あ、ハ、ハイ」
「じゃあ、コーヒー淹れるね」
「ありがとうございます」
奥川さんは、コーヒーメーカーをセットすると、部屋越しに私に尋ねた。
「それで――今日はどうしたのかな?」
「――あ、えっと……」
私は、昼間に思った事を言おうとしたが――何故か、気恥ずかしくなり、口ごもった。
「……その……昔のおばあ様の様子を……思い出そうとしているのですが……」
「うん」
「――……ち、千谷沢さんが、話していると意外と思い出すものだ、と……」
「ああ、そっか。アイツ、昔、そんな事言いながら、聞き込みしていたからね」
「そう、みたいですね……」
言いたい事が伝わったのだろか。
奥川さんは、いろいろと作業をしながら、私に話しかけてきた。
「じゃあ――最近の、おばあ様の様子は、どんなかな?」
「あ、ハイ……落ち着いております。今は、調子が良いようで、お医者様のお世話にはなっておりません」
「そう。基本、もう、ずっと施設にいるのかな?一時帰宅、みたいな事は?」
「お盆とお正月に、帰って来られますが……それ以外は、ずっと、施設です」
「――そう」
彼は、作業に集中しているようで、私も口を閉じる。
そして、少しして、トレイにコーヒーカップを乗せてやってきた。
「どうぞ。今日は、この前よりも頑張ってみたよ」
「――……綺麗……」
カップに描かれているのは、羽を広げている白鳥のよう。
その、繊細さに、ため息が漏れた。
「ありがとう。千谷に出しても、そのまま飲んじゃうからさ、張り合い無いんだよね」
「え」
私は、目を剥きそうになって、慌てて顔を伏せた。
――こんな、芸術作品を、あっさりと⁉
その反応に満足したのか、奥川さんは、にこやかに続けた。