私の恋を探してください
 探偵事務所の電話にかけて十コール目。
 留守番電話に切り替わったため、私は、ため息をつきながら通話終了ボタンを押した。

「汐見さん、出なかったのかい?」

「――あ、ハイ。……出られているようで……」

 鳥居教授に尋ねられ、私はうなづいて返す。
 二人しかいない探偵事務所。
 留守番の人員などいないのだから、仕方ない。
 そうは思っても、おばあ様の事を伝えたくて、気持ちはあせってしまう。
「急ぎなのかい?」
「え?」
「いや、何だか、あせっているように見えたからさ」
 教授は、そう言いながら、自分の椅子に深々と腰を下ろす。
 私は、一瞬、悩んだが、教授は事情をご存じなのだから、と、昨夜の事を伝えた。

「――そう。おばあさんの病院が変わった、ね」

「……ハイ。……てっきり、いつもの所だと思っていたので、そちらに行ったら……入院患者の中には、いない、と――」

 教授は、腕を組むと、私を見やる。

「汐見さんや。――こう言ったら失礼だろうけど――状態が悪いから、大きい病院に行った、ってコトは無いのかい?」

「――え」

 私は、息をのむ。

 ――”終末”。

 奥川さんに言われた言葉が、頭を回る。


 ――そんな……。

 ――私、まだ、おばあ様の初恋の人を見つけてないのに……。

 ――おばあ様に、何の恩返しもしていないのに……!


 徐々に、全身から血の気が引いていく。
 けれど、手に持ったままのスマホが振動して、跳ね上がった。

「――あ」

 表示を見やれば、C.O探偵事務所、と、ある。
 私は、教授に頭を下げると、急いで電話に出た。

「ハ、ハイ、汐見ですっ……!」

『こんにちは、汐見さん。奥川です。ゴメンね、電話もらったみたいで』

 いつものように、穏やかに挨拶をされるが、今だけは、まどろっこしく感じてしまう。

「あ、あの、奥川さん!おっ……おばあ様がっ……!」

『――え?』

「きっ……昨日、帰ったら……高熱で、入院したとっ……!……ですが……いつもの病院ではなくて……どこに入院したか、教えてもらえなくて……!」

 私が一気にそれだけ伝えると、奥川さんは、電話の向こうで何かを言い合っている。
 そして、すぐに言った。

『――わかった。汐見さん、今、大学(がっこう)?授業終わったら、事務所に来られる?』

「ハ、ハイッ……!」

 その言葉に、深くうなづいて返すと、私は、鳥居教授の研究室(へや)を後にしたのだった。
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