私の恋を探してください
 私の報告を聞き終えると、奥川さんは、口元に手をやり、つぶやくように言った。

「可能性としては、鳥居教授の言ってたパターンが、一番高いかな」

「……そう……ですか……」

 私は、ヒザの上に置いた両手を握り締める。

「颯介、とにかく病院行ってみて、いなかったら次、で、良いだろうが」

 実力行使を主張する千谷沢さんを見やると、奥川さんは残念なものを見るような表情になった。
「……な、何だよ」
「千谷、守秘義務、個人情報。単語の意味はわかるよね?」
「……あ、当たり前だろうが」
「さすがに今時、病院で、この人入院してますか、は、できないんだよ?」
「……わ……わかってる……」
 どんどん語尾が小さくなっていく千谷沢さんは、バツが悪そうに私を見やった。
 私は、奥川さんを見やると、恐る恐る口を挟む。
「あ、あの……いつもの病院の受付では聞けたのですが……」
 すると、彼は、一瞬目を丸くし、そして、眉を下げた。
「――申し訳無いけど、たぶん、徹底していない緩いところなんだろうね」
「……えっと……まあ……ふる……れ、歴史のある病院ではありますが……」
 私は、どうにか取り繕うと、いつもの病院を思い出す。

 ――確かに……規模は、N市(こちら)とは比べ物にならないほどで、半分以上は顔見知りのようなところ。
 ロビーでは、患者の個人情報が、世間話レベルで飛び交っているし、最近は、廃院も近いのでは、というウワサもあるそうだ。

「まあ、そういう訳で――汐見さんには、ちょっと待ってもらえるかな」

「……ハイ……」

 申し訳無さそうに眉を下げる奥川さんに、私も、同じような表情になってしまった。

 ――仕方ない。
 ――このご時世、どうしたって、自衛手段は必要なのだ。

 
 ――ウチの集落の方が、おかしいのだから。


 すると、脇に置いていたバッグから、スマホが振動する音が聞こえ、私は、目の前の探偵二人を見やった。

「どうぞ、出て良いよ、汐見さん」

「ハ、ハイ」

 私は、うなづいて返し、スマホを取り出し――一瞬、硬直。


 ――着信。
 ――勝兄さん。


 けれど、大きく深呼吸すると、通話ボタンをタップした。
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