私の恋を探してください
 けれど、結局、代替案が他に見つからず、私は彼等の事務所――C.O探偵事務所に泊まる事になった。

「あ、あの――勝兄さんと家に連絡を……」

 途中、コンビニで必要なものを最低限だけ購入した私は、車に乗る前に、探偵二人にそう言ってスマホをバッグから取り出す。
「ああ、心配させると悪いしね。でも、正直に言わなくて良いよ。ホテルに泊まるって言っておいた方が、無難だから」
 奥川さんにそう言われ、私は、うなづく。
 確かに――探偵事務所に泊まるなんて言ったら、集落御用達のタクシー会社から、一台寄越されてしまうだろう。
 それは、運転手の方に申し訳無い。
 そんな事を思いながら、まずは、勝兄さんに電話をかける。
 すると、二コール目で出てくれた。

「あ、あの、勝兄さん」

『琴ちゃん、今どこ?天気、大丈夫?』

「――えっと……かなり荒れていて、電車が間に合わなかったので……その、ホテルに泊まる事にしました」

 私が、思い切ってそう伝えると、一瞬の間。

『――そっか。……俺が迎えに行きたかったけど、もう、飲んじゃったしね』

「申し訳ありません。ですが、キチンとしたところですので、ご安心ください」

『明日も大学(がっこう)だよね?授業に必要なものがあれば、届けるよ』

「――ありがとうございます。ですが、この天気なので、ご迷惑はおかけできません」

 休講の可能性もあるし――何より、彼を探偵二人と会わせたくない。

 頑なに断り続けていると、勝兄さんは、あきれたように大きく息を吐いた。

『――琴子(・・)』

「――……っ……ハ、ハイ……」

 その不機嫌そうな声音に、私は、身を固くした。

『俺は、琴子が心配だから言ってるんだ』

「……ハイ……」

『今日は、事情が事情だから仕方ないけど、今後、こんな風になったら俺が迎えに行くし、無理ならウチからタクシー出すから』

「……わかりました……。……申し訳ありません……」

 彼は、まだ、私の家にいるようなので、事情を伝えてくれると言ってくれた。
 それにお礼を言い、通話を終える。

「琴子、大丈夫か」

「――ハイ」

 少し遠巻きに様子をうかがっていた千谷沢さんは、私の元にやってきて、のぞき込む。

「――ホントに大丈夫か。……何か、顔色、悪くねぇか」

「あ、大丈夫です。……ちょっと、緊張しただけなので……」

 そう返せば、彼は、少しだけ眉を下げた。

「……婚約者相手に、緊張って……」

「……ほ、本当に、大丈夫です。……いつもの事なので……」

 勝兄さん相手に恐怖を覚える、なんて千谷沢さんに言ったら、すぐ、実家に乗り込まれそうなので、何とか濁して伝えた。

 ――……とはいえ、きっと、彼は、気づくのだろうけれど。

< 65 / 72 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop