私の恋を探してください
 うっすらと目を開けると、見慣れない天井に、一気に覚醒した。

「――えっ、えっ……!??」

 慌てて起き上がると、ズルリ、と、肩から何かが滑り落ち、私は、反射で手を伸ばす。
 周囲を見回し、ようやく、昨夜からの事を思い出して、大きく息を吐いた。
 私は、立ち上がると、毛布を簡単に畳んでベッド代わりにしていたソファに置き、ブラインドから差し込んできた光に、目をすがめながら、そっと窓際に向かった。
 昨夜の雨風が一転、何も無かったような晴天。
 壁にかかっていた時計を見やれば、時刻は早朝五時半過ぎ。
 いつもなら、もう、起きて支度をしていなければならない時間だったので、一瞬、ギクリ、と、してしまったけれど――ここは、探偵事務所。大学まで、そこまで時間はかからない。
 私は、コンビニで買っておいた洗面道具などをバッグから取り出し、給湯室へ。
 そこには、奥川さん愛用のコーヒーメーカーなどが並ぶ棚の反対側に、小さなシンクがある。
 顔を洗うのをためらいそうになったけれど、トイレは部屋の外にあったので、あきらめた。
 簡単に支度を終え、買っていた朝食用のパンを取り出し、小さな冷蔵庫に入れていたペットボトルのお茶を取り出す。
 まるで、自分の城のような感覚を覚えてしまうが、ここは探偵二人の事務所だ。
 私は、朝食を済ませると、思い切ってブラインドを上げ、窓を開けた。
 すると、遠くに電車の音や、前の道路を走る乗用車の音が流れ込んできた。
 
 ――……気持ち良い。

 入ってきた冷たい空気を吸い込み、深呼吸すると、何だか、頭の中がクリアになった気がする。
 私は、部屋を見回すと、入り口のロッカーが目に留まった。
 まるで、学校の掃除用具が入っているよう。
 そう思いながら、そっと開けてみると、中には、昔ながらのホウキとチリトリ。
 そして、バケツや家庭用洗剤、ぞうきん、ゴム手袋。
 完全に、掃除用具入れだった。
 私は、少し考え、ホウキを手に取る。

 一宿一飯の恩義――なんてものでは無いけれど、お世話になっているのだから、せめて、何か役に立つ事をしたい。

 そんな事を考えながら、私は、事務所の掃除を始めたのだった。
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