私の恋を探してください
「あれ、汐見さん。珍しい時間だね」

「――おはようございます、町田先生」

 どうにか大学に到着すると、正門から中に入る。
 そして、今日の講義のある四号棟へ向かう途中、出勤姿の町田先生と出くわした。
 彼は、当然のように、私の隣に並んで歩き出す。

「昨日は、大丈夫だった?相当な雨風だったけど」

「――ハイ。どうにか、やり過ごせました」

「そっか、まあ、こうやって来てるんだから、大丈夫だったんだろうけど――キミの実家の方、土砂崩れ(・・・・)起きただろ?ちょっと心配だったんだ」


「――……え?」


 私は、無意識に足を止めて、呆然と立ちすくむ。

「……あれ、汐見さん?どうかした?」

「――……いえ、あの、私、昨日は……こちらのホテルに泊まったので……」

 町田先生は、言わんとしている事に気づいたようで、慌てて上着のポケットからスマホを取り出した。

「今朝のトップだったよ。キミの家がどこかは知らないけどさ、S村の奥の方ってあったから、てっきりそうだと思って――」

 そう言いながら、ニュース画面を私に見せてくれた。


 ――時刻は、つい、先ほど。


 昨夜の雨が原因で、S村東部の山中で土砂崩れを確認。
 早朝から、被害状況の確認が始まった、との事だった。

 私は、去っていく町田先生にお礼を言って、すぐに自分のスマホを取り出す。
 そして、震える手で、自宅の電話番号を押した。
 ――けれど、通常だって、この時間には、家には誰もいないのだ。
 そう思い直して、次に、兄さんの番号を押す。

 ――……出ない……。

 状況が、まったくわからない中、いつもだったら気にしないような状況でも、今は、悪い想像しかできない。

 ――……どれだけ居心地が悪くても、家族なのだから、何かあったら、やっぱり心配なのに。

 私は、すぐに切ると、勝兄さんの番号を押す。

 ――……勝兄さんにまで、何かあったら……。

 家族と連絡がつかない今、自分が頼れるのは、もう、彼くらいなものなのに。

 すると、十コール目で留守番電話に変わる寸前、電話が繋がった。
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