私の恋を探してください
 早朝――農家の朝は早いので、もう、家人はすべてで払っているのだけれど――私は、歩いて二十分のバス停へと向かった。

 途中、すれ違う親戚に頭を下げながら、始発のバスに乗り込むのは、私だけ。
 運転手さんに挨拶をして、いつもの真ん中一人掛けの席で、教科書を取り出した。
 とにかく――時間を無駄にしたくない。
 そして、留年などになったら、速攻中退させられるだろうから、授業もテストも、手を抜けないのだ。
 高校までは、分校に通っていたから、全国区のテスト以外に、実力を図れる機会も無く。
 結局、N大に入れた、ということで、自分の学力が、そこそこ通用するのだとわかったのだ。

「ありがとうございました」

「ハイ、行ってらっしゃい」

 いつもの運転手さんなので、挨拶はかわせる。
 私は、無人駅から電車に乗り込み、閑散とした車内の隅に座った。
 そして、先ほど出していた教科書と資料を取り出すと、レポートに時間を費やした。

 気がつけば、この二年で見慣れた景色が広がってきて、乗り換えの駅が近い事に気づく。
 私は、勉強道具を片づけると、降りる準備をし、到着後すぐに次の電車へ。
 そして、そこでも勉強を始め――ようやく、大学の最寄り駅へたどり着くのだ。

 これが、私のルーティンで――もう、二年目だ。

 今日の授業は、一限からなので、気持ち早足で改札を通る。
 そして、徒歩で十五分。
 ――ようやく、N大へ到着した。



「おはよう、汐見さん。鳥居教授が呼んでるけど――何かしたの?」

「――え」

 同じ講義を取っていた男子に声をかけられ、私は、勉強道具を片づけながら顔を上げた。
 そして、一瞬悩む。

 ――けれど。

「――ありがとうございます。心当たりがありますので」

「あ、そ、そう」

 立ち上がり、彼に頭を下げると、勉強道具を抱えたまま部屋を出る。
 そして、階段の手前にある教授室のドアをノックした。

「ハイハイ。どうぞー」

 陽気な声が聞こえ、私は、中に入る。

「お呼びでしょうか、鳥居教授」

 ――鳥居(よろづ)教授――N大最古参の教授。

 人文学部では、かなり有名な――つかみどころのない、飄々とした年配男性だ。

 気分によって課題を出したり、フィールドワーク、と、称した遠足を急きょ企画して生徒を巻き込んだり――学校の事務方と非常に相性の悪い方だけど、その名は全国レベルだそうだ。

 私は、もさもさとした頭をかきながらやって来る教授を見上げた。

「――ご用件は」

「またまたぁー。――アイツ等に会ったんでしょ?どうだった?」

 ニコニコとずり下がる眼鏡を直しながら、教授は尋ねる。

 それに、コクリ、と、うなづいて返した。

「――依頼は受けていただけるそうです。……ただ、内容が内容なだけに、難しいかもしれません」

「まあ、それは、アイツ等の腕次第ってコト。キミはキミで、できる事やろうね?」

「ハイ」

 端的な会話が終了し、私は、教授室を後にする。

 ――二限目は授業無しだから――図書館で勉強しようか。

 そう思い、ここから歩いて五分ほどの図書館へと、足を向けたのだった。
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