女神イリオネスと、九ヶ月の飴玉
 イリオネスは力強く立ち上がると、夜の闇を払うように黄金の羽を広げました。

「ちょっと待ちなさい」

 飛び立とうとする彼女を呼び止め、ヒュピヒュピは自身の袖元から、小さな袋を取り出しました。    

 封を開けると、そこには数多くの飴が星屑のようにキラキラと輝いていました。

「君の持つ、その飴と『交換』しないかい? ……大事に持ちすぎて、せっかくのプレゼントが台無しになってしまったら、もったいないからね」

 イリオネスは、自身の懐から取り出した飴を見つめました。

 今朝ヒュピヒュピからもらってからずっと、アフディーたちと分け合う瞬間を夢見ていた大切な飴でしたが、今はそれが、体温で少し溶けて、形が崩れてしまっていたのでした。

「……! うわー、ちょっとベタベタする」

 イリオネスは自身の手を広げるように、形変わった飴を、困惑の表情で見つめます。

「ありがとう、ヒュピヒュピ、でもよくわかりましたね」

 ヒュピヒュピは少し嬉しそうに目を細め、犬のように『クンクン』と鼻を鳴らして空気を嗅ぐ仕草を見せました。

「君から、甘い匂いがしたからね、それにその様子だと、アフディーと、一緒に食べるつもりだったんだろう?」
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