女神イリオネスと、九ヶ月の飴玉
 よろけて振り返ったイリオネスの目に映ったのは、月光のように静かで、けれど初めて見る確かなアルテロスの笑顔でした。

「……はいッ!」

 イリオネスがアフディーの元へ駆け寄ると、笑顔を交わしました。
 背中のバイオリンを構えると、アフディーたちの演奏に参加します。

 そんな彼女らを邪魔しないように、アルテロスは、凛々しくも力強い咆哮を空に向け叫びます。

「アプロン! 準備はいいか。私たちの妹、イリオネスが来て一周年の(……本当は九ヶ月だがな!)お祝いだ!」

 三日月に足をかけていたアルテロスは、不敵な笑みを浮かべてサングラスを掛け直すと、凄まじい轟音と共に宙へと舞い上がりました。

 雲の上では、アプロンが呆れながらも、この状況を楽しむ声でつぶやきます。

「やれやれ。双子だっていうのに、弟使いが荒いんだから」

 遥か高み、太陽を引く馬車の上では、アポロンは手鏡で前髪を整えると、悪戯心溢れる笑顔で、アフディーたちを確認しました。

 彼が分厚い雲の中へと、馬車ごと入り込むと、雲の隙間から溢れ出した太陽の光が、放射状の幾筋もの黄金の矢となって、天界を神々しく貫きました。
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