女神イリオネスと、九ヶ月の飴玉
「そんな借り物の道具じゃ、本当の気持ちなんて届けられないだろう。お前自身の、ありのままの音で表現しろと、叱りつけて取り上げたところだ」

「……そうだったのですか」

 見つめたアフディーは、演奏に身を躍らせ、足のつま先でテンポをとり心地よさそうです。

 肩に乗る『カタツムリ』も目を閉じリズムに乗せるように首を左右に振り、『青い鳥も、食いしん坊のうさぎ』と、笑顔で顔を見合わせます。

「全く、あいつも気が早い奴だ。お前がここへ来て、まだ九ヶ月だというのに。もう一周年記念だなんて、浮かれすぎなんだよ」

 フン、と鼻で笑いながら言ったアルテロスの言葉に、イリオネスはハッとしました。

「……えっ?」

(なぜでしょう。あんなに無関心そうに見えたアルテロス様が、私がここへ来てからの月日を、こんなにも正確に覚えているなんて)

 驚いて顔を見上げたイリオネスの頭に、アルテロスは少し乱暴に手を置きました。

 そのまま髪を『くしゃくしゃ』と掻き混ぜると、彼女の背中を力強く押し出します。

「ほら、そんな顔してないで、お前も楽しんでこい。……妹」
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