恋が終わる音がきこえた
新学期
「ねえ美緒、今年も同じクラスでよかったね〜」
机に突っ伏しながら、
鈴川姫香(すずかわ ひめか)が嬉しそうに笑う。
「昨日も聞いた、それ」
「だって嬉しいんだもん」
そんなやり取りをしていると、
教室の前の扉が開いた。
「はーい、席つけー」
担任の先生が入ってきて、
騒がしかった教室が少し静かになる。
「じゃ、まず学級委員決めるぞー」
その言葉に、
クラス中から小さくため息が漏れた。
「あー…やりたくねぇ」
「絶対忙しいやつじゃん」
そんな声が飛ぶ中、
先生が名簿を見ながらふっと笑う。
「まあ、佐々木は今年も頼めるよな?」
「……え?」
突然名前を呼ばれて、
教室の視線が一気に集まった。
「去年もちゃんとしてたし」
「いや、でも…」
断ろうとした瞬間、
「佐々木なら安心〜」
なんて声まで飛んできて。
結局、私は小さく頷くしかなかった。
「よし決まり。じゃあもう1人は?」
その瞬間だった。
「——僕やります。」
後ろから聞こえた声に、
自然と顔を上げる。
窓際の席で手を挙げていたのは、
神崎颯太(かんざき そうた)だった。
「おー、助かる」
先生が嬉しそうに頷く。
神崎くんは去年から有名だった。
優しくて、
誰とでも分け隔てなく話して、
勉強もできる。
いわゆる、“人気者”。
そんな人が学級委員に立候補したことで、
教室が少しざわつく。
「じゃあ決まりなー」
先生の声で、
とんとん拍子に話は進んでいった。
その横で、
「……え、かっこよ」
姫香がぽつりと呟いた。
「ん?」
「いや、いまの見た!?
“僕やります”だって!爽やかすぎん!?」
興奮した様子で、
私の腕を揺らしてくる。
「はいはい、落ち着いて」
「むり!絶対いい人じゃん!」
目をきらきらさせる姫香に、
思わず小さく笑ってしまった。
——その時の私はまだ、
姫香のその一言が、
全部の始まりになるなんて思ってなかった。
ーーーー
ホームルームが終わると同時に、
教室は一気に騒がしくなった。
「美緒、学級委員長がんばってね〜」
「他人事みたいに言わないでよ…」
鞄を整理しながら返すと、
姫香はへらっと笑う。
「だって私、絶対向いてないもん」
「それは否定しない」
「えー!?」
そんなくだらないやり取りをしていると、
「あの、佐々木さん。」
不意に名前を呼ばれた。
振り返ると、
そこには神崎くんが立っていた。
「あ……」
近くで見ると、
思ったより背が高い。
それに、
柔らかく笑うから少し話しづらい。
「学級委員、一年間よろしくね」
「あ、こちらこそ…よろしくお願いします」
軽く頭を下げると、
「そんな固くならなくて大丈夫だよ」
神崎くんは困ったみたいに笑った。
「俺も結構わかんないこと多いし」
“俺”。
さっきまでの“僕”とのギャップに、
なぜか少しだけ驚く。
「……佐々木さん?」
「あ、いや、ごめんなさい」
ぼーっとしていたことを誤魔化すように首を振ると、
後ろから勢いよく肩を掴まれた。
「美緒!!」
「わっ」
「神崎くん!鈴川姫香です!!」
突然割り込んできた姫香に、
思わず目を瞬かせる。
神崎くんも一瞬驚いたあと、
ふっと笑った。
「知ってる。佐々木さんといつも一緒だよね」
その言葉に、
姫香は見るからに嬉しそうに顔を輝かせた。
え、覚えられてたんだ!」
「うん、有名だし」
「え〜なにそれうれしい!」
姫香は満面の笑みでそう言って、
私の腕にぎゅっと抱きつく。
「ね、美緒!」
「はいはい」
いつものやり取り。
なのに、
神崎くんはそれを見て小さく笑った。
「ほんと仲いいね」
「ニコイチなんです〜!」
姫香が得意げに言う。
“ニコイチ”。
周りから何度も言われてきたその言葉を、
姫香はすごく気に入っていた。
「いいな、そういうの」
神崎くんがぽつりと零す。
その声が思ったより柔らかくて、
少しだけ胸に残った。
「じゃあ俺、職員室にプリント持ってくるから」
「あ、私も行きます」
慌てて立ち上がると、
神崎くんは少し目を丸くしたあと笑った。
「ありがとう。助かる」
そう言って歩き出した背中を見ながら、
「……やば」
後ろで姫香が小さく呟いた。
「え?」
「かっこいい……」
本気っぽい声だった。
私は思わず吹き出す。
「さっきからそればっか」
「だってほんとにかっこいいんだもん!」
姫香は頬を押さえながら、
ふにゃっと笑う。
「たぶん私、一目惚れした。」
——その瞬間。
なぜか胸が、
少しだけざわついた。
机に突っ伏しながら、
鈴川姫香(すずかわ ひめか)が嬉しそうに笑う。
「昨日も聞いた、それ」
「だって嬉しいんだもん」
そんなやり取りをしていると、
教室の前の扉が開いた。
「はーい、席つけー」
担任の先生が入ってきて、
騒がしかった教室が少し静かになる。
「じゃ、まず学級委員決めるぞー」
その言葉に、
クラス中から小さくため息が漏れた。
「あー…やりたくねぇ」
「絶対忙しいやつじゃん」
そんな声が飛ぶ中、
先生が名簿を見ながらふっと笑う。
「まあ、佐々木は今年も頼めるよな?」
「……え?」
突然名前を呼ばれて、
教室の視線が一気に集まった。
「去年もちゃんとしてたし」
「いや、でも…」
断ろうとした瞬間、
「佐々木なら安心〜」
なんて声まで飛んできて。
結局、私は小さく頷くしかなかった。
「よし決まり。じゃあもう1人は?」
その瞬間だった。
「——僕やります。」
後ろから聞こえた声に、
自然と顔を上げる。
窓際の席で手を挙げていたのは、
神崎颯太(かんざき そうた)だった。
「おー、助かる」
先生が嬉しそうに頷く。
神崎くんは去年から有名だった。
優しくて、
誰とでも分け隔てなく話して、
勉強もできる。
いわゆる、“人気者”。
そんな人が学級委員に立候補したことで、
教室が少しざわつく。
「じゃあ決まりなー」
先生の声で、
とんとん拍子に話は進んでいった。
その横で、
「……え、かっこよ」
姫香がぽつりと呟いた。
「ん?」
「いや、いまの見た!?
“僕やります”だって!爽やかすぎん!?」
興奮した様子で、
私の腕を揺らしてくる。
「はいはい、落ち着いて」
「むり!絶対いい人じゃん!」
目をきらきらさせる姫香に、
思わず小さく笑ってしまった。
——その時の私はまだ、
姫香のその一言が、
全部の始まりになるなんて思ってなかった。
ーーーー
ホームルームが終わると同時に、
教室は一気に騒がしくなった。
「美緒、学級委員長がんばってね〜」
「他人事みたいに言わないでよ…」
鞄を整理しながら返すと、
姫香はへらっと笑う。
「だって私、絶対向いてないもん」
「それは否定しない」
「えー!?」
そんなくだらないやり取りをしていると、
「あの、佐々木さん。」
不意に名前を呼ばれた。
振り返ると、
そこには神崎くんが立っていた。
「あ……」
近くで見ると、
思ったより背が高い。
それに、
柔らかく笑うから少し話しづらい。
「学級委員、一年間よろしくね」
「あ、こちらこそ…よろしくお願いします」
軽く頭を下げると、
「そんな固くならなくて大丈夫だよ」
神崎くんは困ったみたいに笑った。
「俺も結構わかんないこと多いし」
“俺”。
さっきまでの“僕”とのギャップに、
なぜか少しだけ驚く。
「……佐々木さん?」
「あ、いや、ごめんなさい」
ぼーっとしていたことを誤魔化すように首を振ると、
後ろから勢いよく肩を掴まれた。
「美緒!!」
「わっ」
「神崎くん!鈴川姫香です!!」
突然割り込んできた姫香に、
思わず目を瞬かせる。
神崎くんも一瞬驚いたあと、
ふっと笑った。
「知ってる。佐々木さんといつも一緒だよね」
その言葉に、
姫香は見るからに嬉しそうに顔を輝かせた。
え、覚えられてたんだ!」
「うん、有名だし」
「え〜なにそれうれしい!」
姫香は満面の笑みでそう言って、
私の腕にぎゅっと抱きつく。
「ね、美緒!」
「はいはい」
いつものやり取り。
なのに、
神崎くんはそれを見て小さく笑った。
「ほんと仲いいね」
「ニコイチなんです〜!」
姫香が得意げに言う。
“ニコイチ”。
周りから何度も言われてきたその言葉を、
姫香はすごく気に入っていた。
「いいな、そういうの」
神崎くんがぽつりと零す。
その声が思ったより柔らかくて、
少しだけ胸に残った。
「じゃあ俺、職員室にプリント持ってくるから」
「あ、私も行きます」
慌てて立ち上がると、
神崎くんは少し目を丸くしたあと笑った。
「ありがとう。助かる」
そう言って歩き出した背中を見ながら、
「……やば」
後ろで姫香が小さく呟いた。
「え?」
「かっこいい……」
本気っぽい声だった。
私は思わず吹き出す。
「さっきからそればっか」
「だってほんとにかっこいいんだもん!」
姫香は頬を押さえながら、
ふにゃっと笑う。
「たぶん私、一目惚れした。」
——その瞬間。
なぜか胸が、
少しだけざわついた。