執拗な恋、夜を飲み干す。
伝えなければ始まらない
 結局、私は翌週末、再びあのバーの前に立っていた。

 どうしても彼に会いたかった。そして、もし前に会った時のことをなかったことにしたくないのなら、いっそ開き直って自分の気持ちと向き合うしかない、と思い至った。

 変な人間だと思われ、引かれてしまったかもしれない。だけど、あの告白がただの酔っ払いの冷やかしだと思われることだけは、何よりも耐え難かった。

 私は大きく深呼吸をしてから、覚悟を決めてドアを開けた。

 店内は、相変わらずほどよく賑わっている。

 真っ先にカウンターへ視線を走らせたが、そこにいたのは玲さんではなく、もう一人の黒髪の男性だった。彼はグレーアッシュのウェーブヘアが印象的な女性客と、何やら言い合っている。

 ふと、その男性が私に気づき、「あ」と短く口を開いた。けれどすぐに、面白がるような笑みを浮かべて「カウンターの空いているところへどうぞ」と、流れるように案内された。

 その様子で、ああ、あの日の事覚えているんだなと理解し、死にたくなった。それをぐっと堪え、軽く会釈をして店内を見渡したが、玲さんは奥で別の客の対応に追われていて、まだこちらには気づいていない。

 代わりに従業員の彼がこちらへ寄ってくると、声を掛けてきた。


「今日はお酒、やめときます?」


 玲さんの丁寧な物腰とは違う、計算されたフレンドリーさが混じる話し方。
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