執拗な恋、夜を飲み干す。
「何か逃げられてなかった?」

「うーん…」

「何言ったら女に逃げられるわけ? 雰囲気王子様風イケメンくん?」


 口元を緩ませた雅が回してきた腕を、思い切り払い落とす。


「君みたいに強引に捕まえたりしないから」

「いいから黙って抱いてみたら? 意外と相性良くて相手にももう逃げられねぇかもしれないし」

「その思考は下半身に脳みそがあるあんただけよ。玲くんに余計な事言わないでよ」

「身体から始まる恋もありなんじゃん? 夏帆だって俺に抱かれて好きだった事思い出したくせに~」

「ほんっとうにカス!」


 二人の言い争いに溜息を吐き、手持ち無沙汰を紛らわすようにグラスを磨く。

 雅は本当にまともなことを言わない。
 そもそも、こいつにまともな意見なんて求めていない。

 どうして雅のような男に夏帆ちゃんが惹かれるのか。なぜこんな男に多くの女性が寄ってくるのか。不思議で仕方ない。どう見てもろくな男じゃない。顔に騙されて痛い目を見る前に、「こいつには近づかない方がいい」と女性客に忠告して回るのが、俺の本来の役目ではないかとさえ思う。

 そう考えていると、夏帆ちゃんが雅を選んだ理由を知りたくなった。

 彼女は俺と同じ仕事人間だと思う。雅と縒りを戻した時も、不鮮明な関係を経て、なし崩し的に付き合い始めたと聞いている。


「…ねぇ、夏帆ちゃんはさ、人を好きになる上で何を一番見てるの?」

「え、うーん…、何でしょうね。私最終的に好きになった相手これ()だから何の参考にもならないと思うんだけど」

「これってなんだこのクソ面食い」


 不服そうな雅を無視して、夏帆ちゃんは人差し指を顎に当て、考え込むような仕草を見せた。
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