執拗な恋、夜を飲み干す。
「好きになるのに何が重要って聞かれても全くわからないのよね。だって、顔を重要視して好きになっちゃったら、結果こんなクズに捕まったわけだし。強いて言えば自分の直感かしらね」

「お前って本当言いたい放題だよな」

「私はその時に心を動かされたものを信じて好きになるのよ。ごちゃごちゃ考えたら無駄に悩んでその瞬間にしかつかめない幸せも逃しちゃうもの」


 俺には全く分からない。どうせ本気で好きになって、手を伸ばしたところで、「ずっと一緒」なんて奇跡あるはずもない。

 心を動かされた瞬間は、あの日と…、今の仕事に出会った時くらいだ。

 最初は、時給の良さに惹かれただけのバーのバイトだった。だけど、そこで初めて先代のマスターがお酒を作る姿を見て、心を射抜かれた。これを一生の仕事にしたい、と。

 あの一瞬の出来事が、今の自分を作っている。そう考えると、彼女の直感という言葉も、あながち間違いではないのかもしれない。

 だけど、今の俺にはそれを確かめる術がない。

 いつか、その答えを見つけられる日が来るのだろうか──。
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