執拗な恋、夜を飲み干す。
 雅さんとそんな会話をしていると、お店のドアが開いた。

 入ってきたのは、いつものアッシュグレーのウェーブヘアが印象的な女性。少し気の強そうな、けれど凛とした美人だった。

 きっと、この人が雅さんの彼女。彼女はボックス席にいる玲さんに気づくと、親しげに手を振る。それからカウンターにいる雅さんを見つけ、迷いのない足取りで私の隣までやってきた。


「初めまして。よくお店いらしてますよね?」

「あ…、そうです」

「夏帆です。私もよく来てて」


 彼女が柔らかく微笑むのを見て、同性ながら思わず見惚れた。


「さっき言ってたうちの彼女」


 雅さんの紹介に、私は「ああ!」と合点がいった。改めて夏帆さんに向き直り、「紗希です」と自己紹介をする。夏帆さんは笑いながら、私の隣の席に腰を下ろした。


「こんなデリカシーのない事、聞いてもいいのかなと思ったんですけど、どうしても聞きたくて。玲くんに会いに来てるんですよね?」


 直球の問いかけに、頬がカッと火照る。雅さんの恋人で、玲さんを"玲くん"と呼ぶ間柄だ。私のことだって、とっくに話題に上っているに決まっている。
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