執拗な恋、夜を飲み干す。
「いろいろ話したいなと思ってもバーじゃ、誰に聞かれているかもわからないので、場所を変えた方がいいかなって」


 時刻は二十二時。居酒屋の多くがラストオーダーを促し始める時間帯だ。まだ開いている店もあるけれど、がやがやとした騒がしい場所で話すような内容ではない気がした。

玲さんはどこへ向かっているのか、私の歩幅に合わせてゆっくりと歩いてくれる。車が通り抜けるような狭い路地でも、さりげなく私を建物側へと寄せてくれた。そんな何気ない優しさに触れるたび、不意にときめかされてしまう。


「俺の馴染みのバーがあるので、そこでもいいですか?」

「あ、…はい」


 私の返事を聞くと、玲さんはそれ以上何も言わずにまた歩き出した。

 バーに場所を移して、何を言われるのだろう。
 分からないからこそ、ただただ怖い。

 少し歩いた先で、玲さんは扉を開け、私を中へと促した。一歩足を踏み入れると、そこはSABLEとはまた異なる、照明を極限まで落とした隠れ家のようなバーだった。

 カウンターの奥にいた男性が私を見て「いらっしゃいませ」と微笑み、その後に続く玲さんの姿を認めると、驚いたように目を見開いた。


「玲」

「奥、空いてる? 誰も使ってなきゃ使いたいんだけど」

「いいよ」


 その返事を聞くや否や、玲さんは奥にある扉を開け、中へと促した。
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