執拗な恋、夜を飲み干す。
玲の過去
───Side 玲


 俺が恋した女の子は、誰よりも明るく、クラスの学級委員を務めるような、俺とは正反対の存在だった。正義感が強く、誰にでも分け隔てなく接する太陽のような子。

 小学生の頃は、正直そんな彼女がうざったいとさえ思っていた。その真っ直ぐな正義感は、当時の俺には暑苦しく、できるだけ近寄りたくない相手だった。

 だけど、いつの間にか俺の中で、彼女は守りたい存在に変わっていた。

 きっかけは、中学一年生の時だった。たまたま忘れ物をして放課後の教室に戻ると、彼女が窓際の席に座り、一人で外を眺めていた。夕暮れの光に照らされたその横顔は、ひどく綺麗で、だけど涙が零れだしていた。

 声を掛けるべきか迷ったが、そうしている間に彼女が俺の気配に気づき、こちらに振り向いた。


「え」

「…ごめん。見るつもりじゃなかった」


 気まずさを抱えながら教室に入り、自分の席へ向かう。
 机から忘れ物を取り出し、無造作に鞄へ詰め込む。

 こんな時、どう声を掛ければいい?  なんで泣いてるの? と事情を聞くべきか。それとも泣くなよと励ますべきなのか。

 あいにくこの手の状況には慣れていなさすぎて、何が正解なのか見当もつかなかった。

 俺がどう振る舞うべきか測りかねていると、その女子、明音《あかね》は、ぱっと明るく笑った。さっきまであんなに暗い表情で涙を流してたくせに、強がる姿を見せた。


「そんな気にしなくていいよ。たいしたことないからさ」


 嘘だ、とすぐにわかった。本当は誰かに助けてほしくて仕方がないはずなのに、絶対に弱みを見せない。

 その日からだった。強がりで、どうしようもなく不器用な彼女のことを、俺が守りたいと思うようになったのは。
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