執拗な恋、夜を飲み干す。
 彼女がもう二度と現れないのだとようやく実感したのは、数ヶ月が経ち、彼女の墓参りに行けた時だった。

 彼女の実父が手続きを行い、墓前で涙を流している姿を目の当たりにした瞬間、「ああ、本当にここにいないんだな」という事実が、重く、鋭く、胸の奥に突き刺さった。

 告白もできず、助けることもできず、ただ無力に立ち尽くしていた自分。何もできなかった過去を、数えきれないほど呪い、悔やんだ。

 自分には、誰か大切な人と幸せになる資格なんてない。どうせ最後にはすべて失ってしまうのなら、最初から何も持たなければいい。大学時代、そんな考えを抱いてからは、もう二度と恋なんてしないと心に決めた。

 彼女への未練と、自分の中にある罪悪感からどうにか逃れたくて、告白された人と付き合ってみたこともあった。だけど、そんな打算的な逃避ができるはずもなく、結局は一日で別れを告げる。

 そうして、空っぽの今の俺が出来上がった。


「玲ってモテんのに女に興味ないんだな」


 大学三年生の頃、雅にそう言われたことがある。講義室の席で隣に座り、頬杖を突きながら俺を見ていた。


「…君は何でそんなに恋愛脳なの? むしろ」

「恋愛脳って、別にそんな馬鹿みたいに恋愛してきたわけでもない。遊んでただけ」

「最悪の回答なんだけど」


 そんな軽口を叩き合っていると、雅はふっと笑って、講義の準備をしながら言っていた。


「きっと、俺はまともに恋愛するのは最初で最後になる気がするんだよ」


 この時、彼がすでに交際していたのが夏帆ちゃんだった。

 迷いなくそう言い切れる雅が眩しくて、同時にどうしようもなく羨ましかった。


「…そっか」


 そう呟くことしかできない俺は、また、懲りもせずに明音のことを考えていた。
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