執拗な恋、夜を飲み干す。
めぐりめぐる
 私は今、いつもとは違う少し離れた場所にいた。玲さんと、二人で。

ことの始まりは、先日の店での会話だった。「来週末はいないと思います」と、彼から事前に聞かされていた。


「え、珍しい。何か用事ですか?」

「まあ、少しだけ実家に行くので」

「なるほど」


 彼にも帰省のタイミングくらいあるだろうと、その時は特に違和感も抱かなかった。

 だけど、来週末は会えないのか…と、寂しさが顔に出てしまっていたのかもしれない。玲さんはグラスを磨きながら、ふっと柔らかく笑った。


「一緒に来ます?」

「え?」


 驚きのあまり間抜けな顔で固まる私を、玲さんは冗談を言っているような目では見ていなかった。

 家族団らんに参加していいのは、彼女かお嫁さんだけでしょう! 烏滸がましいにもほどがある!

 混乱の極致に達した私は、自分の頬を思い切り平手打ちした。


「ちょっと…、紗希さん…?」


 玲さんの少し困惑した声が聞えてくる。


「そんな! いけません! さすがにそこまでは弁えてます!」

「あ、うーん。言葉足りなかったな。実は…、明音の命日で」

「え?」

「亡くなったすぐ以来、行けてなかったんですけど、紗希さんに話して、行ってみようかなと勇気が出たので。一人だと、実は心細いのもあって…」


 小さな声で零された本音。

 それを聞いた途端、おめでたい勘違いで浮かれていた自分が猛烈に恥ずかしくなった。

 今回の帰省は、単なる里帰りじゃない。彼が前へ進むために必要なこと。
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