執拗な恋、夜を飲み干す。
「…嫌、ですかね?」

「嫌なわけないです! ただ、その…、連絡先もらえるだけでも舞い上がっちゃいそうで…」


 消え入りそうな声で本音を漏らすと、玲さんは一瞬きょと、とした表情を浮かべ、それから声を立てて笑った。その涼やかな笑い声が耳に届くたび、私の顔はさらに熱を帯びていく。


「本当、素直な人だな」

「え?」

「そういうのって、言わないじゃないですか、人って。思っていたとしても」


 可笑しそうに目を細めながら、玲さんがスマートフォンの画面にQRコードを表示させて待ってくれている。

 私は一度大きく深呼吸をしてから、スマートフォンを取り出し、そのコードを読み取った。

 画面に現れた名前は相原 玲。アイコンはどこかの静かな風景写真で、ホーム画面にはバーの店内の写真が設定されていた。玲さんらしい、シンプルで飾らないプロフィール。


「花巻さん、っておっしゃるんですね」

「そうです。花巻 紗希」

「今初めて知ったかも」

「あ、確かに。そもそも名乗ったのも大分後だった気もします」


 そんな、なんてことのない他愛のない会話。

 以前の私なら、彼を前に緊張しすぎて長居することなんて到底できなかった。今は、こうして笑い合える時間が、少しずつ心地いいものへと変わってきている。
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