執拗な恋、夜を飲み干す。
 玲さんが一歩踏み出すのに合わせ、私もそっと歩み寄る。


「ご無沙汰しております」

「玲くん、大きくなって」

「来るのが遅くなってしまって…、その…」


 玲さんは言葉を詰まらせていた。ここに来るまで、そしてこの墓前に立つまで、どれだけの葛藤があったか。

 溢れ出そうになる感情を抑え込むように、彼は視線を落とした。


「明音も、喜んでます。十四年ぶり、くらいかな」

「…はい」

「…そちらの方は? 彼女さん?」

「あ、いえ。彼の…、友人です」


 何と言えばいいか悩んだけれど、この場ではこの答えが最適解だと思った。

 彼女という言葉に照れて否定したわけではない。玲さんの好きな女性の墓の前で、そんな浮かれたことは言っていられないから。

 きっと彼は、明音さんしか好きになれない。
 その思いを私が誰よりもわかっている。


「そう、でしたか…。玲くんも結婚してもおかしくないんだなって思って」

「まだ、何も考えていなくて…」

「…玲くん。もし明音のことで罪悪感を感じてるなら、追い込まないようにね」


 その言葉に、玲さんは目を見開いた。

 お父さんはどこかでわかっていたのかもしれない。玲さんが過去を引きずり、なかなか自分の幸せへと足を踏み出せずにいることを。
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