執拗な恋、夜を飲み干す。
 その会話の後、玲さんは少しずつ落ち着きを取り戻し、私達は二人で墓前に並んで手を合わせた。

 何も話さず、ただ静かに目を瞑り、心の中で彼女へ思いを馳せる。今の私にできることは、彼に言葉を掛けることではない。ただ隣に居ることだけだ。だから私は、沈黙を守り、ただじっと彼の傍に寄り添った。

 玲さんは長い間、心の中で明音さんに語りかけているようだった。私はその凛とした、けれどどこか寂しげな横顔を見つめていた。

 明音さん、あなたの好きな人は、まだずっとあなたの事を想っています。中学生の幼い時からずっと。彼はすごく一途で、真っ直ぐで、優しい人です。彼の想いも、貴方に届いていますように。

 やがて玲さんは、ゆっくりと顔を上げた。


「付き合わせてしまって申し訳ないです」

「いえ」


 短く答えて、私もゆっくりと立ち上がる。
 去り際、もう一度だけ明音さんの眠る場所を振り返った。


「また、来ないとですね。今度は、もっと早いうちに」

「………はい」


 玲さんはそれだけを絞り出すように答えると、「行きましょうか」と促して、静かに歩き出した。私もその隣に並び、一歩ずつ歩調を合わせるようにして、その場を後にした。
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