執拗な恋、夜を飲み干す。
────Side Rei
実家に帰ってきた、その夜。
唐突に帰省した俺を見て、母親は驚いていた。大学進学を機に地元を離れてから、ずっとここには帰ってきていなかった。いや、帰ってこられなかった。
自室の棚に置かれた写真立てには、明音と一緒に撮った写真が収まっていた。二人とも、まだ子供らしい笑顔で写っているけれど、今ならわかる。この時の彼女の笑顔は、すでに無理をして作った強がりの笑顔だった、と。
彼女が心から笑えていた瞬間なんて、本当にあったのだろうか。俺には、わからない。
俺はそのまま、棚から中学時代の卒業アルバムを掴み出し、ページをめくった。明音の写真は少ない。だけど、この分厚い冊子の中に、二枚だけ彼女が写っているのを見つけた。俺はその明音の笑顔を、指先で優しくなぞる。
『だから、"明音の大切な人"には幸せでいてほしいな』
ふいに、明音の父親の言葉が脳裏に蘇る。
無意識のうちに、アルバムを握る手に力がこもった。苛立ちが、胸の奥からせり上がってくる。過去の不甲斐ない自分と、今もなお一歩も進めずにいる自分への、拭い去れない苛立ち。
「…俺には、今でも十分だよ」
好きな仕事をして生きている。それだけで、十分に恵まれすぎている。
今の俺がこれ以上を望むことなんて出来ない。
実家に帰ってきた、その夜。
唐突に帰省した俺を見て、母親は驚いていた。大学進学を機に地元を離れてから、ずっとここには帰ってきていなかった。いや、帰ってこられなかった。
自室の棚に置かれた写真立てには、明音と一緒に撮った写真が収まっていた。二人とも、まだ子供らしい笑顔で写っているけれど、今ならわかる。この時の彼女の笑顔は、すでに無理をして作った強がりの笑顔だった、と。
彼女が心から笑えていた瞬間なんて、本当にあったのだろうか。俺には、わからない。
俺はそのまま、棚から中学時代の卒業アルバムを掴み出し、ページをめくった。明音の写真は少ない。だけど、この分厚い冊子の中に、二枚だけ彼女が写っているのを見つけた。俺はその明音の笑顔を、指先で優しくなぞる。
『だから、"明音の大切な人"には幸せでいてほしいな』
ふいに、明音の父親の言葉が脳裏に蘇る。
無意識のうちに、アルバムを握る手に力がこもった。苛立ちが、胸の奥からせり上がってくる。過去の不甲斐ない自分と、今もなお一歩も進めずにいる自分への、拭い去れない苛立ち。
「…俺には、今でも十分だよ」
好きな仕事をして生きている。それだけで、十分に恵まれすぎている。
今の俺がこれ以上を望むことなんて出来ない。