執拗な恋、夜を飲み干す。
───Side Saki


 翌日、約束通り私達は玲さんの母校を回った。

 先に訪れた高校は、それほど大きくはないけれど、手入れの行き届いた綺麗な校舎だった。

 だけど、次に向かった中学校は、もう無くなっていた。随分前に合併されたようで、跡形もなくなっている。元気な生徒の声も、グラウンドを走る姿も見えない。

 玲さんはただ、かつて校舎があった場所を静かに見上げていた。


「まあ、もう古かったですし、生徒も少なかったので」

「そう、なんですね」

「学年で二クラス六十人とかだったかな。そんなものだった気がします」

「少ないですね」

「紗希さんはどんな感じでした?」

「私も大きくはないですが、三学年で百人以上はいたと思います。一クラス四十人いかないくらい」


 二人でそんな話をしながら、周辺をぐるりと歩いた。

 あそこが明音さんとよく話した公園だとか、あそこのメンチカツをよく食べたとか、どこでどう過ごしたかを、玲さんは穏やかな声色で教えてくれた。

 中学時代は学ランだったこと。運動は苦手ではなかったけれど、好きではなかったから部活には入っていなかったこと。文化部にも入らなかった。とにかく団体で何かをするのが苦手で、協調性がなかった…とか、そんな中学生時代の話を、彼はたくさん聞かせてくれた。

 まるで、明音さんと思い出話をするかのように。

 私は相槌を打ちながら、ただただ聞いていた。
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