指先で恋を伝えて
本当は、もっと丁寧に言葉を返したかった。
けれど、今の私にできるのは、それが精一杯だった。
それでも、彩羽さんは、とても嬉しそうに笑ってくれた。
すると、雅人さんがゆっくりと話し出す。
「実は、手話をしていると、好奇や同情の視線を向けられることが多くて……」
そこで、雅人さんは私に視線を向けた。
「高橋さんみたいに、なんのてらいもなく真っ直ぐ受け止めてくれる人に出会ったのは、初めてなんです」
「だって、お二人の手話、とても優しくて、綺麗だったから」
「そんな風に感じてくれて、嬉しいよ」
そう言って、雅人さんはふわりと微笑む。
その笑顔に私の心臓はトクトクと早く動き出した。
――ああ。
私はきっと、もう。
この人に惹かれ始めている。
「私、もっと手話を勉強します。お二人とお話出来るぐらいに」
「じゃあ、一緒に練習しましょう。相手がいた方が早く覚えられます」
「……いいんですか?」
「もちろん」
そう言って微笑む雅人さんに、胸がまた熱くなる。
手話を覚えたい。
その理由が、少しずつ変わり始めていることに、私はまだ気づかないふりをしていた。