指先で恋を伝えて

差し出された名刺を受け取る。

その瞬間、指先が触れた。
大きくて、少しひんやりした手。
なのに、不思議と心臓が熱くなる。

名刺の肩書には、”神崎不動産 専務”と書かれていた。
神崎不動産。
地元では知らない人がいないくらい有名な会社名に、私は思わず大きく目を見開いた。

多忙な中、彩羽さんの付き添いをしているのも、妹が初めていく店。それもオープンしたての小さな店では、心配が(まさ)ったのだろう。
妹思いのお兄さん。そう思うと、心があたたかくなる。

「ご丁寧にありがとうございます。私、ネイリストの高橋美織です。よろしくお願いします」

私も名刺を渡す。それに視線を落とした雅人さんは、ふっと微笑んで、私を見た。

「高橋美織さんと、おっしゃるんですね。いい名前だ」

褒められ慣れてない私は、恥ずかしくなって、少し焦ってしまう。

「で、では、どのデザインがいいのか、いろいろ見てみましょう」

と、ごまかすようにタブレットを操作する。

私の説明を聞きながら、雅人さんは両手を動かし、彩羽さんへ丁寧に通訳してくれる。
彩羽さんは頷いたり、笑ったり、ときおり質問を交えながら、一生懸命デザインを選んでいた。

通訳をするたびに、雅人さんの手が動く。
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