醜と美そして陰謀論、を物語る。

さぁ罪をコクって貰おうか? はい、犯人は僕です!

 

 密書として届けられた手紙を読み終わった例の三男であるトン(銅)は言った。

「アカメ、上京の支度をしろ」

 この言葉に傍に侍っていたアカメ十五世はびっくり。トン様が上京? 年賀の挨拶といった公式行事以外ではそんなことは絶対にしないというのに! もしや冠婚葬祭の件で?

「いったいなにがあるのですか?」

「母様が亡くなったとのことだ」

「そっそれは……ご愁傷さまでございます」

「年始に倒れられてからいつの日かと覚悟はしていた。まぁ俺としては親不孝ですっかり見放されていたがな。母様も俺には期待していなかったし……いや、野心を抱かない分だけは親孝行したといって良いだろう。自主的に後継者競争から降りたのならあっちはホッとしていたんじゃないか? まっもっとも会えば説教ばかりであったから、俺のことが気に入らないといった複雑な心境ではあったろうがな」

 トンの言葉にアカメ十五世は反応しない。母と子の関係など他者が口出しすることではないと彼は思っているからだ。

「そうですかお亡くなりに……すると新王は御決定してのことで」

「いや、決まっていないだろうな。兄からの密書にこう書いてある。王妃様のご葬儀の後に親族会議を開きたいとのことだ」

「するとそこで次期の新王が公表されるということで?」

「いや、この流れは、おかしい。順序がぐちゃぐちゃだ。そもそもの話、王が亡くなられた際に新王が公表されなかったことが異常なことだった。三年も非公表とは前代未聞だ。その間に後継者が不良化したり病気やケガをしたり最悪死亡したらどうなる? それでも父はそれをやったわけだが……しかしやはり問題が起こったようだな。だからすぐに公表できず親族会議の開催。これはいったいに何だと思う?」

「うむ、後継者様に不具合が生じた……いえ、長男のジン(金)様も次男のイン(銀)様も御健在で三男のトン様もこの通りで。不備があるとは思えませんが、名無しであったとかでしょうか?」

「名無しの場合はその前の紙に書いてあった名前がそれになる。指名書は前の名前を燃やしてはならないという王法に書いてある。そういった違反行為をあの父がするとは思えない」

「となると……王族以外の名前とかですか?」

「それも無効化となる。必ず王家の血を引く王子の名でないとならないし、それに父には王族以外の男にそのように特別に目をかけていたものなどいない」

「だとしたらますます分かりません。いったいどのような名前が書かれていたらこうなるのでしょう?」

「考えられるとしたら……王族の名前だがいないもの、いや生死不明だから死亡認定ができないもの、だが……」

 トンは言葉を切りアカメの目を見つめる。するとアカメ十五世は顔中に汗をにじませて目を逸らした。それを見てトンは微笑んだ。

「……つまりはだずっとずっと探しているあの王子の名前だ」

「えっ!! まさかテツ様のお名前が!!」

「そうテツだ。だからこその親族会議であると俺は推察する。アカメもこの地を代表する顔役だ。さぁ俺と上京するぞ。これは大変な会議となりそうだ」


 この恐ろしい話を聞いてしまった日からアカメ十五世のお腹は鈍痛がして堪らない。あの王子の微笑みは何だったのか?

『おぅアカメ……お前のいるところにいるテツを出して貰おうか? 隠したって無駄だ、調べがついているんだからよぉ。おらぁキリキリと白状せぇ! 痛いか? 痛いよなぁ? もうやめるから、さぁ告白してもらおうか! おおっと告白とは今だと恋愛感情を告げる意味が主流だが、ここだと罪と悪を白状することだからな、勘違いして恋心をコクるんじゃあないぜ。なんだって? 恋は罪悪です、そして神聖なものです、だって? こころから離れろぉ先生かおめぇはよぉ! やっちまえ!』

 と王子に依頼された拷問官に詰められたらどうしようと思うと怖くてしょうがない。

 えっ! そうなんですか! テツが新王の可能性!? いやぁ実は自分のところにその次期王がいますから王様問題はこれで解決ですよね?

 とかもやってみるものならそれはもう大変なことになるに決まっている。偽証罪に誘拐罪から国家反逆罪に加えて陰謀を企てたものとして糾弾されること必至。

 このテツの発見を喜んでくれる王様はもういない。いるのは敵だらけ。王子二人の力を前にしたらアカメ一族なんて族滅コースまっしぐらよ。アカメ家滅亡という一大叙事詩となってしまう。

 だから嫌だったんだよあんな爆弾を抱えるだなんてさ! よりによって王様指名の可能性があるだなんて、嘘だろそんなのこんなの想定外だよ。想定していたやつがいたがまさかまさかだよ!

 単勝万馬券の勝率は1%であるからこそ遊びでやる分には買う価値のある券だが、本気でやっている方からしたら買っちゃいけない券でしかも当たっちゃったよこれ。

 どうしよう……とアカメ十五世は頭を抱える。妻に話すべきか? そうだよカツテに話したい。そしてともに苦悩を分かち合いたい……駄目だ! そんなこと言えない……

 この妻には言えない秘密を抱えてしまった夫の苦悩が恐ろしい陰謀劇へと続いていく。

 次回「あの時は良いって言ったけど、あとになって考えてみると、やっぱり良くなかったから今から糾弾するね」をお送りします。
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