醜と美そして陰謀論、を物語る。
蕎麦の作法とか最初はネタだったはずで、わさびを醤油に溶かすなと一緒だが、やがてネタからベタとなる
アカメは都の立派な建物を見上げながら思う。都なんか人が住む場所なんかじゃない。元から住んでいるのならともかくわざわざ上京するところではない、と。
地元の食い詰め者や一攫千金を狙う野心家が貧乏生活するのがお似合いなところさ。若い頃は元気があるから都会の劣悪な環境でもたくましく生活が出来るが、年を取ってからは若い頃と同じ生活が出来る身体ではなくなっており悲惨な生活を送らざるをえなくなる。
何者かになろうとした彼らだが結局は何者にもなれず貧困から抜け出せずに未婚のまま独り都会の片隅で何も残せずに命尽き、その命を溶かした養分で都会が肥え太りつやつやに潤った肌色で新たな田舎者を誘惑し次なる犠牲者を待つそんなアリジゴクなんだよ。一種の吹き溜まりであり余剰人口の受け入れ先で棄民のセルフ姥捨て山。
そしてここは水は悪いし飯は高くてマズい。観光客向けの見た目が綺麗な店では騙される方が悪いという傾奇町敵な没倫理観が横行しその点では老舗の方が安全だが、その老舗も老舗で妙なマイルールが確立しており客にそれを押し付け守っていれば当然な態度で一見さんやお上りさんを怖がらせるのだ。
とある人が言うにテーブルマナーは万国共通で一度覚えれば世界中どこでも通用するが、東京の老舗のマイルールは店ごとに違うためいちいち緊張するとのこと。
だいたい蕎麦を食べる際の妙な作法とかあれはカッコつけもそうだが初めは上京ものをからかった遊びでそうやって脅かして意地悪するためのものだったじゃないかと最近思えるし。はじめはネタであったがやがてベタとなる。そうネタからベタになるとそれが風習や文化になるというわけだが。わさびを醤油に溶かすなとかね。
とにかくまぁそういう地元では味わえない刺激を楽しむための観光なら分かるが、住んではいけないしここで働いてはならないし夢見てはならない。
そうだとも詩にあるじゃないか、故郷は遠きにありて思うもの、帰るところにあるまじや、ひとり都のゆふぐれに……と犀星の詩だと都に帰っちまうから駄目だ。妻を月に返してはならない都会に戻してはならない。
とにかく都とは観光地であり都の王宮区一丁目一番地に住む以外はメリットはない。無いということにする! カツテにとって地元を観光するというのは妙かもしれないが年一とかの帰京で十分だ。
そのためには導師サビの計画を何とかしなければならない。奴の計画の中心にあるテツだが、上京を諦めさせて……クレナイの婿とするのはどうだろう?
クレナイは学問で立身出世したいようだが、ここは一族のためにテツと無理矢理結婚させていいかもしれない。テツもこの俺には深い恩義があるのだ。俺の娘の婿になれと言っても嫌とは言えないはず。
そしてクレナイにもお父さんの言うことは絶対だという権力を用いて上京を諦めさせテツと夫婦となり地元を支えてもらう。これが理想的だ。酷い? 二人の若者の夢を奪うのは確かに酷いが、上京して散々な目に会うよりかはなんぼかマシなはずだ。王宮での権力争いに敗れ都の片隅で極貧生活を送り病に倒れるそんな都会のドブネズミなんかよりも田舎のネズミのほうがずっと幸せなはず。
そうだとも、あのサビの復讐に嫁と娘を付き合わせる道理など無い。そしてこんな都会などに住まわせるわけにもいかない。もしも都が噂通りの是非とも住まねば一生の悔いな理想郷なら話は別だがそうではないと俺の中では決着がついている。
こちらはほぼ無敗。ただデカい建物があるだけの場所でその地価の高い場所で食べる鎖店の味は旨い、以上! それ以外は金、金、金、淫売、そして死だ!(砂漠じゃない方のロレンス)
……と、アカメ十五世は拗れた愛郷精神で精神的勝利を掴みとりそして以下のようにまとめた。
カツテ→都には観光旅行で行こうね。
クレナイ→テツと結婚しなさい。
テツ→俺の娘の婿となれ。
サビ→復讐を諦めろ、復讐は無意味だ、というか迷惑だ、やるなら一人でやれ→なにぃ?だったら俺を始末するだとぉ?→なら最終的に倒すしかないか。というかこうなるのなら先手でやってもいいか。駄目? だってあれは最恐の復讐鬼だぜ、後手必敗なら先手必勝の先制攻撃による予防戦争発動。そうしないと身を守れないからね。えっ? あらゆる戦争は自衛戦争から始まるって? ごめんそういう難しい話は分からないが、まぁあれでしょ? 俺はいまから侵略戦争をするなんていう人はいないってことね、はい。
こうしてアカメは反都会主義と反復讐主義を融合させサビへの敵意を完成させた。それから王妃のご葬儀に参列しそれから関係者のみが集う極秘の王族会議が開かれた。
長男であるジンはもちろん次男のイン、そして政治家たち。その中にアカメがいたが驚くばかり。人が、少ない。何人でも入れそうなこの大部屋の規模にしては不釣り合いなほどの少人数。これはいわば密室政治というもので何か良からぬ陰謀でも起こってしまうのではないのか? アカメは三男であるトウの後ろに立ちながらそう思った。自分はトウ様のお付きみたいなもの……何もできはしないが、どうか不安が当りませんように。
アカメは祈りながら会議の進行を聴いている。だがその内容は……王位継承者を指名する書にはテツの名前があったことであった。
最悪だ……とアカメは目の前が真っ暗になった。悪い方に大当たりだ。どこの誰だよ不安は当たらないとか自信満々にサブタイトルにしていた間抜けは! もしもこれが公表されたらサビが立てている陰謀が発動してしまう。
そしてアカメ家は色々で様々な要因で滅亡となってしまう! それを防ぐためには俺がやらねばならぬ! みんなあまりのことに黙っているが俺だけは黙っていられぬ! 俺が黙ったら一族滅亡、みんな俺の話を聞け! 一話だけでもいいから!
アカメが挙手し彼に場の視線が注目する。次回、アカメ十五世、一世一代の陰謀発動