逃げられるものならお好きにどうぞ。
「黒瀬くん、鍵はここに置いておくから。好きに使ってね」
「え、このまま百合子さんの家にいていいの?」
「うん。だって迎えにきてくれるんでしょ? それに、その……せっかくだし、黒瀬くんさえよければ、今日も泊まっていってくれても……いいんだけど」
何故か言葉が尻すぼみになってしまった。
だけど私の言いたいことは、黒瀬くんにばっちり伝わったみたいだ。
「百合子さんがそこまで言うなら、泊まっていこうかな」
「……別に、そこまでは言ってないよ」
「ふっ、照れない照れない」
クスクス笑っている黒瀬くんは、何だか嬉しそうだ。
「わ、私、そろそろ行かないと」
準備しておいたバッグを持って玄関に向かおうとすれば、私の頭をポンポンと撫でていた大きな掌が、頬に下りてくる。