逃げられるものならお好きにどうぞ。


「うん、その服も似合ってるよ」

「……着替えることになったのは、誰のせいだと思ってるんですか」

「んー、誰のせいだろうね?」

「白々しすぎ。マイナス十点」

「ふっ、手厳しい」



ふざけたやりとりを続けながら玄関に向かえば、黒瀬くんも後をついてくる。お見送りしてくれるみたいだ。


――実は先ほど、居酒屋まで送ると言い出した黒瀬くんをやっとのことで言いくるめたばかりなのだ。迎えにまできてくれるというのに、それはさすがに申し訳ないからと。

また気が変わって送っていくと言い出さないうちに、早いところ家を出てしまいたい。



「それじゃあ、行ってくるね」

「いってらっしゃい。二十一時前には着くように迎えに行くけど、もし早まるようなことがあれば連絡してね」

「うん、ありがとう」

「道中気をつけてね」

「ふふ。うん、分かってるよ」



手を振る黒瀬くんに背を向けて、家を出る。

居酒屋は、最寄駅から電車に乗って二駅のところにある。

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