逃げられるものならお好きにどうぞ。


「……すごい」



初対面で助けてくれた時にも感じたことだったけど、黒瀬くんは本当に喧嘩が強いらしい。

多勢に無勢で圧倒的に黒瀬くんが不利だと思っていた喧嘩は、ものの数分で決着がつきそうだ。


黒瀬くんが怪我をする心配はなさそうだと私も安心して見守っていた――その時。



「っ、オレがやってやる……!」



一人の男が、黒瀬くん目掛けて駆けていく。その手に握られているのは――鉄パイプだ。


どうやらこの男は、私と同じように隣のコンテナの陰に潜んでいたらしい。

迫る男に、黒瀬くんは背を向けていて気づいていない。


男の後を追うようにして、気づけば私も駆け出していた。けれど距離があり、黒瀬くんを庇うにはとても間に合いそうもない。



「っ、黒瀬くん!」



声を出せば、私の存在に気づいた黒瀬くんは目を丸めて――けれど背後から迫っていた男には一切動揺している様子もなく、勢いのある回し蹴りを相手の側頭部に決め込んだ。


男の手から、カランと音を立てて鉄パイプが落下する。そして直後、男も地面に倒れ込んだ。

辺りをシンとした静けさが包み込む。

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