逃げられるものならお好きにどうぞ。
「百合子さんはホッケー得意なの?」
「ううん、正直全然……だから黒瀬くんの足を引っ張っちゃうかも」
「それじゃあ、百合子さんにいいとこ見せるチャンスだね」
黒瀬くんの頼もしい言葉に安心して笑っていれば、それが聞こえたらしい皇さんが「こっちも負けてらんねぇな」と美代さんに話しかけているのが聞こえてきた。
けれど美代さんは「……そ、そうですね」と反対方向を向いて、たじたじな様子で言葉を返している。
――美代さんが、皇さんと二人きりで話が持たなくなったらどうしようかと心配していた理由が分かった気がする。
「うしっ、じゃあ始めるか」
「皇さん相手だからって、手加減しないからね」
こうしてエアホッケー対決が始まった。
黒瀬くんは宣言通り、私のミスをカバーしながら、一人でどんどん点を決めていく。対する皇さんも、獲られた点はきっちり獲り返してくる。
すごく良い勝負だ。
「黒瀬くんすごい……!」
「やった、百合子さんに褒められちゃった」
黒瀬くんは満足そうに微笑んだ。
得点はこちらが二点リードしている。このままいけば勝てるだろう。私は喜びながらも、視線をチラリと前方に向ける。