逃げられるものならお好きにどうぞ。
――美代さんは初めこそ皇さんとコミュニケーションを図ろうと頑張っていて、パックの打ち合いが止まったタイミングで皇さんに声を掛けていた。
「つ、次は私が点を獲りますから」
「お、頼もしいな」
先ほどよりもずっと良い雰囲気で話す二人を、私も微笑ましく見ていたのだけど――さっきから、何だか美代さんの様子がおかしい。
俯いてブツブツと何かを呟いている。
「ねぇ黒瀬くん、何だか美代さんの様子……変じゃない?」
小声で聞いてみれば、美代さんに視線を送った黒瀬くんはその顔に苦い笑みを浮かべた。
「え? ……あぁ、もしかしたら……美代さんのスイッチが入っちゃったのかもしれないね」
「スイッチ? それってどういうこと?」
詳しい話を聞こうとしたその時――私と黒瀬くんのいる台に向かって、物凄いスピードでパックが滑り込んできた。
どうやら美代さんたちの方にポイントを一点獲られてしまったようだ。
というか、今パックを打ち込んできたのって……。