逃げられるものならお好きにどうぞ。
「き、聞いてないですよ……!」
「そう? てっきり椿に聞いてると思ってたわ」
黒瀬くんに顔を向ければ、黒瀬くんはにこりと笑って一言。
「あれ、言ってなかったっけ?」
「っ、聞いてないよ……‼」
黒瀬くんに詰め寄れば「わ、百合子さんってば積極的」だなんて揶揄い雑じりに喜ばれ、何故かそのまま抱きつかれた。
その背中をぺしりと叩いて腕の中から抜け出す。
「あんたたち、人前でいちゃついてんじゃないわよ」
「す、すみません」
美代さんにじろりと睨まれてしまったので、大人しく謝る。
「それに男とか女とか……そんなの些細なことなんだから、どっちでもいいでしょ」
「そ、それはまぁ、そうですけど……」
今どき同性同士で恋愛することだって普通のことだし、異議を唱えるつもりも否定するつもりだって毛頭ない。
でも、事前に教えてもらいたかったっていうのが本音ではある。すごくびっくりしたから。