逃げられるものならお好きにどうぞ。


「え、これって……」

「今日、付き合ってちょうど一か月記念だからさ。これ、百合子さんにプレゼント」



花束の向こう側からひょっこり顔を出した黒瀬くん。その手には見慣れたケーキ屋の袋もぶら下がっている。



「薔薇の花束とか、ちょっとベタかなとも思ったんだけど……実際に見たらすごく綺麗だったから、百合子さんにプレゼントしたくて。あとケーキも買ってきたから、一緒に食べよ」



黒瀬くんはにこにこと嬉しそうだ。

対する私は、驚きで固まったまま。



「百合子さん?」

「……ごめん、黒瀬くん。びっくりして……」

「喜んでもらえた?」

「……うん。すっごく、すっごく、……嬉しい」

「……そっか。ならよかった」



黒瀬くんは安心したように笑うと、持っていた花束を脇のコンソールテーブルに置いて、ふわりと包み込むように抱きしめてくれる。



「ねぇ百合子さん。これからもずっと、俺と一緒にいてくれる?」

「……うん」



私の返答に満足そうに、幸せそうに笑った黒瀬くんに、そっと口づけられる。



「やっぱり百合子さんって、結構泣き虫だよね。泣き顔、久しぶりに見た」



黒瀬くんに言われて、気づけば涙を流していることに気づいた。

嬉しくて泣くなんていつ以来だろうか。ちょっと恥ずかしい。

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