逃げられるものならお好きにどうぞ。


「何よ、私だって、本気を出せばチョコくらい……」



――美代さんの反応を見る限り、どうやら黒瀬くんの言うことは事実のようだ。



「美代さん。あの……よければ一緒に作りませんか?」

「え?」

「チョコです。美代さん、皇さんに渡すんですよね?」

「なっ……ま、まぁね。普段お世話になってるし?」



美代さんは頬を薄っすら赤くしている。

……恋する乙女だ。可愛いなぁと微笑んでいれば、美代さんにジロリと睨まれてしまった。



「……しょうがないから、百合子ちゃんと一緒に作ってあげるわ!」

「ふふ、はい。それじゃあ週末、家にきますか?」

「百合子ちゃんの家に? ……いいわよ。それじゃあ材料は私が買っていくわね」

「いいんですか? ……ありがとうございます。それじゃあ何を作るか、ざっくり決めちゃいましょうか」



美代さんとスマホでレシピを検索して眺めていれば、黙ったままの黒瀬くんが、何故かにこにこと楽しそうに笑っていることに気づく。



「黒瀬くん……何だか楽しそうだね?」

「うん。だって俺のためのチョコレートを考えてくれてるんだよね?」

「それは、まぁ……そうだね」

「楽しみだなぁ」



黒瀬くんからにこにこと満面の笑みで見つめられてそっと視線を逸らせば、視線の先にいた美代さんが口角を持ち上げて、挑発じみた微笑を浮かべているのが目に映る。

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