逃げられるものならお好きにどうぞ。


「椿のやつ、私が戸籍上の性別は男だから……百合子ちゃんと二人きりの空間が心配だったんじゃないの?」

「心配、ですか?」

「多分だけどね。……あっ、一応言っておくけど、私が百合子ちゃんに対して性的な感情を抱くことなんて、今すぐ世界が滅亡する確率以上に、ぜっったいに有り得ないから。安心してちょうだいね」

「は、はい」



――そこまで強く否定されると、私って魅力がないのかなとか……女としては如何なものかとへこみそうにもなるんだけど……まぁ、美代さんは私を安心させるために言ってくれたのだと深くは考えないことにして、気持ちを切り替える。



「わ、美代さん、オシャレなエプロンですね」

「でしょ? 今日のために買ったのよ」



美代さんは、前の方にリボンの結び目が見える形の黒のリネンエプロンを身に付けて、その場でくるりと回って見せてくれた。

いつもは下ろしている栗色の髪の毛も、今日は後ろでアップに纏められている。


誰が見たって、綺麗さと可愛さを兼ね備えた見目麗しいお姉さんにしか思えないだろう。

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