逃げられるものならお好きにどうぞ。
「これ、材料は用意してきたからね」
「ありがとうございます」
今日作るものは、美代さんと相談して事前に決めていた。
比較的簡単に作れるトリュフと、生チョコのケーキを作ることにしたのだ。
美代さんが買ってきてくれた材料を一緒に確認してから、早速お菓子作りに取り掛かる。
まずはチョコレートを刻んで湯煎で溶かすところから――なんだけど。
「み、美代さん、ちょっと待ってください!」
「何よ?」
「それ……何をしようとしてるんですか?」
「何って……チョコを溶かすんでしょ?」
美代さんは“当然でしょ”と言わんばかりの表情で、熱湯の中にチョコレートのかたまりを投入しようとしている。
――うん。これは、しっかり丁寧に説明しながら進めないと。
「美代さん、まずチョコを溶かすには……」
一緒にレシピを見ながら、ガナッシュ用のチョコを刻んで、生クリームを鍋に入れて温めて、チョコレートを混ぜ合わせて、手のひらで丸めて……と手順通りに作業を進めていく。
手を動かしながらも、この前一緒に買い物に行った際に気になったことを、この際にと質問してみることにした。